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2年超続いた当連載の最終回は、特別編。社長の脳を短時間でリフレッシュする脳トレが経営能力アップに役立つ理由を詳しく説明する。意識の仕方次第で、効果は倍増するのだ。

篠原菊紀(しのはらきくのり)
脳科学者。東京大学大学院教育学研究科修了。公立諏訪東京理科大学・工学部情報応用工学科教授、地域連携研究開発機構・医療介護・健康工学研究部門長、学生相談室長。「遊んでいるとき」「運動しているとき」「学習しているとき」などの脳活動を研究し、介護予防、教育、企業との商品開発に生かしている。テレビ、ラジオ、雑誌などでの脳に関する解説のほか、脳に関する著書多数

 一見、経営力には関係ないような脳トレも、実は大いに経営能力の維持、向上に役立ち得ます。

 例えば、インプットされた大量の情報を一時的に記憶し、考えたり判断したりするワーキングメモリ(作業記憶)は、まさに脳内で「社長」のような司令塔の役割を持つ領域。疲労や加齢などに伴って、この領域の処理が追いつかなくなると、的確な判断や新たな発想が生まれにくくなります。

 ですが、脳トレでワーキングメモリをはじめとした脳領域を鍛えることで、効率的に仕事をこなしたり、解決策を導き出しやすくなったりするのです。

 この連載の狙いは、多様な問題を掲載し、気分転換しながら経営力に必要な脳領域を鍛えることでした。解説部分に、ビジネスシーンを想起させるような言葉を入れていたのにも理由があります。

 詳しく説明しましょう。

仕事とリンクさせる

 経営能力を高める脳トレに重要なのは、自分の解いた課題が仕事のどの部分に役立つのか、その脳トレは自分のどの力を高めるのかを意識することです。脳トレを解くときと経営の現場に立つときの頭の使い方は同じなのだと重ね合わせることで、脳トレで刺激した脳回路が、実際の課題にぶつかったときに活性化しやすくなるからです。

 反対に、経営課題を考えるとき、「あの脳トレを解くみたいだ」と思い出すと、その脳領域が働きやすくなります。

 そして、課題を何回も繰り返し、楽に解けるようになったときには、脳トレと経営をつなぐ脳の基礎的な回路が形成される。そうなれば、脳は一層、飛躍的な力を発揮することができるのです。