差別化戦略は事業の新たな2軸目を創り出すこと

具体的な事例はありますか。

石原:前述したV字回復のガソリンスタンドは15店舗ほど展開していましたが、そのうち3店舗を閉め、空いた土地を貸し出すとともに、経営資源を先ほどのマトリクスに従って、効率化、投資、強化と再配分しました。カギを握ったのが「メンテセルフ店」への投資です。従来、ガソリンスタンド経営はフルサービスかセルフサービスの2業態で、セルフでは車検や洗車、整備などのサービスを行わないのが通常でしたが、こうしたサービスを提供するセルフ店を導入したところヒットし、今では当たり前の業態になりました。

 メンテセルフ店の店長には若手の有望株を抜擢(ばってき)し、優秀な従業員を配置するなどの施策を実施した結果、1%を切っていたROAが3年目に上がり始め、7~8%に達しました。収支はトントンから、3年目に4000万円の利益を出し、5年目には1億円に達しました。

2つ目の「差別化」戦略について教えて下さい。

石原:差別化で重要なことは「2軸思考」です。前述のガソリンスタンドでいえば、ガソリン料金の高低という軸に「メンテナンス」という2軸目を取り入れたのが、それです。しかも、従来型の安い洗車ではなく、特殊コーティングを施す高額な洗車サービスを導入し、収益性を高めました。

 経営者はつい安く提供する方向に考えがちですが、価格とは別にもう1つの軸を立てると、そこに空白地帯があり、差別化できるわけです。

 2軸目は、客層(男性or女性/若者orシルバー)や展開エリア(全国展開or地域密着/国内のみor海外も)、商品の質(アフターサービスありorなし)など、顧客、エリア、商品、3つの観点で考えるとアイデアが出てきます。

 差別化戦略ではこの2軸目を考えつけば勝ちです。そのために私は100個のアイデアを考えるようにお勧めしています。10個ではだめですね。どうしても今の延長線上の無難な戦略から抜け出せないからです。無理をしてでも100個考えると、踊り場を抜け出せるユニークなアイデアが出てくるものです。

2軸目を100個考える
2軸目を100個考える
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戦略を実行する上で社員の反発が起きることもあるのでは。

石原:それは当然、あります。ビジョンや戦略を浸透させる上で、7つのリスクがあります。

 第1に「頑張るで片付けてしまう」こと。明確な目標を与えずにただ頑張るではうまくいきません。第2に「階段の段差が大きい」こと。一気に進めようとしてハードルを上げすぎると絵に描いた餅に終わります。そのため、段差を小さく、具体的にします。具体策と目標、担当、期限を決めた「行動具体化シート」を作成します。第3に「NGワード」を多用すること。例えば「強化する」とか「徹底する」とか数値目標なしに曖昧な言葉を並べても失敗します。第4に「期限がない」こと。言うまでもなく期限を決めなければ前に進みません。第5に「責任者がいない」ことも同じです。第6に「あらかじめ失敗を想定していない」こと。戦略の実行で失敗や障害は当然、発生します。事前に想定して手を打つ必要があります。第7に「空中戦」になってしまうこと。経営者やリーダーが怒鳴る、叱咤するだけでなく、行動具体化シートを作成することが必要です。

 成果が出ている企業は、現場のリーダーが自発的に行動具体化シートを作れるようになるまでこの活動を続けています。ビジョンや戦略の浸透のためには欠かせない取り組みです。

(構成・吉村克己)

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2/22ウェビナー開催、ウクライナ侵攻から1年、日本経済「窮乏化」を阻止せよ

 2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。  日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。 

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■テーマ:ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済「窮乏化」を阻止せよ
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