利益が出ていないわけではない。経営者も社員たちも頑張ってはいる。でもなぜか売り上げも利益も一昔前のように伸びていかない。そんな成長の「踊り場」状態にある企業が増えている。そこで日経トップリーダーでは12月6日に「中小企業のための踊り場脱出セミナー」を開催する。講師の石原尚幸氏に踊り場を抜け出す方法を聞いた。
踊り場企業は価格競争に巻き込まれた低収益体質
多くの企業が「踊り場」状態にあると石原さんは常々指摘しているそうですね。
石原:一見すると売り上げはさほど減っておらず、業績も堅調そうに思えるが、実態は利益がなかなか出ない、収支トントンという企業が意外に多いのです。それを「踊り場」と呼んでいます。経営者たちはこのままでは赤字に陥るし、先が見えない不安を抱えているが、打つ手がないという状況にあるわけです。
それは成長率が落ちているのか、収益率が落ちているのかどちらが原因なのでしょうか。
石原:両方ですね。先代の時代までは右肩上がりで成長し、それなりに利益も出ていたが、自分が継いでからは売り上げが鈍化し、粗利も増えない。先代からのビジネスモデルを守ってきたがゆえに価格競争に巻き込まれてしまって利益が減っていくというパターンが多いですね。踊り場から脱出するために社長は頑張り、現場を叱咤(しった)し、現場も奮闘しているが、うまくいかないわけです。
その原因は従業員側にあるのですか、経営者側にあるのですか。
石原:間違いなく経営者側にあります。私はかつて出光興産で働き、特約店の担当営業として経営の立て直しに協力したり、時には倒産しかかった大手特約店をV字回復させたりしたこともあります。このV字回復させたガソリンスタンドでも当初、踊り場から脱出できないのは現場に原因があると思い、研修やイベントの仕掛けなど一生懸命にやりましたが、成果が出ませんでした。
現場をいくらいじっても効果がないので、開き直って社長と相談しながら拠点の整理や人員の配置転換、サービスや顧客戦略を見直したら立ち直ったのです。結局、経営戦略に間違いがあったわけです。
経営者に戦略のミスを自覚してもらうのは難しいのでは? 何か自己診断できるような指標はあるのですか。
石原:決算書で真っ先に注目するのがROA(総資産利益率)です。総資産を利用してどれほど利益を上げているのかが分かり、一目で実力を測ることができます。踊り場企業のROAは3%以下で、1~2%が多い。これが4~6%になると高利益体質であり、上限は8~9%程度でしょう。ROAは自己資本や借入金、土地建物などの資産をどれだけ利益に還元できているのかを見るもので、ROAが低い企業経営は明らかに戦略ミスと言えます。
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