本連載の最終回となる第10回は、広島県福山市の精密鋳造部品メーカー、キャステムの二代目、戸田拓夫社長である。若い頃の挫折を乗り越え、多品種小ロットのものづくりで年商84億円にまで成長、売り上げの9割が海外生産でグローバルに展開している。

精密鋳造部品メーカーのキャステムを率いる二代目の戸田拓夫社長。多品種小ロットのものづくりと海外での生産で企業規模を拡大してきた(写真/キャステム提供)
精密鋳造部品メーカーのキャステムを率いる二代目の戸田拓夫社長。多品種小ロットのものづくりと海外での生産で企業規模を拡大してきた(写真/キャステム提供)

 キャステムの前身は1948年創業のマルト製菓である。創業者の戸田昭三氏は機械工作が得意で、あめやカステラなどを製造する機械を独自で開発し、製菓機械部門を独立させた。戸田拓夫社長は、「子供の頃、おもちゃ屋で見たプラスチック製のカートがとても欲しかったのですが、買える値段ではありませんでした。でも1週間後、父がスチール製のカートを手作りしてくれたのです。そのときの喜びが、私のものづくりの原点です」と語る。

 戸田拓夫氏は56年生まれ、早稲田大学理工学部在学中に体調を崩し、中退して福山に帰郷した。2年間の療養後、80年に入社したが、ベテラン技術者が他の社員を連れて退社してしまい苦境に陥った。それから拓夫氏は社内体制の立て直しとともに、他社が引き受けない小ロットで面倒な部品の注文を受け、深夜まで製造する日々だった。

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