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中堅・中小企業経営者が今読むべき新刊書籍4冊を紹介する。今月は、東京・目黒のイタリア料理店「ラッセ」のオーナーシェフ、村山太一著『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』のほか3冊を取り上げる。

『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』
著者:村山太一
出版社:飛鳥新社
価格:990円(税込み)

 東京・目黒のイタリア料理店「ラッセ」は2011年にオープン。開店半年でミシュラン1つ星を獲得以来、9年連続で星を保ち続けている。

 コロナ禍も黒字を達成。5月の売り上げは前年比48%まで落ち込んだものの、11万円の黒字になったという。

 なぜこんな「奇跡」を起こせたのか。オーナーシェフの村山太一氏が3年前からサイゼリヤでアルバイトを続け、同社の仕組みを自店に導入。生産性を格段に向上させてきたことが大きな要因だ。

 村山氏がサイゼリヤでアルバイトを始めたのは、長時間労働の常態化で従業員が定着せず、先行きに不安を感じたから。「効率的な運営で知られるサイゼリヤで生産性を高める仕組みを勉強しよう」と考えた。

 一流のやり方を「完コピ」するのが村山流。同社の手法に倣い、席数を減らしたり、設備や作業を見直したりした。効果は歴然。18年と19年で比べると、従業員1人当たりの年間売上高は約2.2倍の1850万円となり、経常利益率は8%アップ。労働時間は16時間から9時間半に、従業員数は9人から4人に減った。結果的に人時生産性は約3.7倍まで向上した。

 アルバイトをすれば誰でも実現できることではない。村山氏には修業時代に培った観察眼がある。加えて、サイゼリヤ創業者の正垣泰彦氏のほか、正垣氏が影響を受けた渥美俊一氏の本を62冊読み込んでいた。こうした予備知識があればこそ吸収力も大きい。

 何より村山氏は経験や実績を脇に置き、20歳以上若い従業員からも素直に学んだ。謙虚になることは、そう容易ではない。

■訂正履歴
『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』の書評本文中で、著者・村山太一氏のお名前を「村上氏」と表記していました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2020/11/27 20:10]