みなみ・けいた
みなみ・けいた
1985年石川県生まれ。米カリフォルニア大サンディエゴ校経済学部を卒業後、2009年に大和総研に入社。東京都内の外食企業などの勤務を経て13年1月に家業であるチャンピオンカレーに入社。16年10月から3代目の社長に就任(写真:山岸政仁)
『現代語訳 武士道』
著者 : 新渡戸稲造
訳者 : 山本博文
出版社 :筑摩書房
価格 : 858円(10%税込み)

 今回は、新渡戸稲造の著した『武士道』を紹介します。新渡戸稲造はご存じの通り明治期を代表する我が国の偉人です。

 本書が世に出たのは1899年です。その数年前に日清戦争に勝利した新興近代国家の日本は国際社会、特に列強と呼ばれる欧米諸国の中で存在感を高めていく時期でした。勃興するアジアの島国に対しさまざまな角度から関心が高まっていましたが、文化的・歴史的に欧米と共有するものが少なく、相互の行動原理の理解には高いハードルがありました。

 本書はその序文で、執筆に至る経緯と動機が記されています。そのきっかけとは、知人のベルギー人法学者による「宗教教育のない日本では、どのように道徳を教えるのか」という問いです。これは本書執筆より10年以上前のことでしたが、当時の新渡戸はその問いに即答できませんでした。また彼は米国出身の女性(メアリー・P・エルキントン)と結婚しており、家庭内でも日本の思想・風習に関して頻繁に議論していたようです。

 これらを受けて本書は、主に欧米諸国に対し日本人の道徳的修養が「武士道」の精神によって支えられていることを、その内容と共に紹介する目的で著されました。

 内容に簡単に触れておけば、まず仏教・神道・儒教といった精神文化が日本の封建社会にもたらした影響を紹介しています。その後、具体的に「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」などの基本的な徳目を詳説し、続けて武家における教育の在り方や、武士道にある自己抑制傾向、あだ討ち制度、刀の象徴的意味、女性教育と女性の地位の問題など、欧米人目線で気になるだろう主だった項目を解説しています。

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