M&Aプラットフォームの出現がM&Aのあり方を大きく変えたことは、前回お話ししました。顕著な変化の1つは、買い手の層が格段に広がったことでしょう。かつては大企業の専売特許だったM&Aが、個人事業者や、果ては個人でさえ手の届くものになったのです。

 それはとても素晴らしいことですが、副作用として今までは考えられなかったトラブルが起こることになりました。

 実は、今までのM&A仲介会社が扱ってきた案件と、M&Aプラットフォームに掲載されているM&A案件は微妙に性格が異なります。

 M&A仲介会社の扱う案件の大部分は法人丸ごとのM&Aで、株式譲渡と呼ばれる方法で売買されます。一方、プラットフォームの案件はビジネスの一部を切り出して売買することが多く、通常は事業譲渡という形が用いられます。

 事業譲渡は負債を継承する必要がないなどM&A手法として優れているのですが、新たに参入した不慣れな買い手にとってはトラブルを招く一因になっているのです。

 事業譲渡では法人を丸ごと買うわけではないので、資産・負債、契約関係などの移転は個別に行わなければなりません。そのため、店舗の賃借契約が継続できなかったり、従業員が辞めてしまったり、取引関係が切れたり、最近では営業用に使っていたECモールやSNSアカウントの名義が変更できなかったりと、事業移転に関わるさまざまなトラブルが発生します。