今年8月、東京・中野に24時間営業する無人の古着店(写真)が開いた。経営者の柔軟な発想による同店は、人口減少時代の新しい売り方を示している。店員を増やす、営業先に何度も通うといった従来の売り方を見直し、人手をなるべく少なく済ませる効率的な売り方が今求められている。本特集では、コロナ下で加速する「売り方革新」の実像を探る。

(写真:尾関裕士)
(写真:尾関裕士)

<特集全体の目次>
・24時間、店員ゼロで売り上げを伸ばす古着店
・若手が提案、マーケティングオートメーションで古い営業を効率化
・営業担当は置かない。お客の側から注文が来る仕組み
・非対面で売る秘訣  「オンライン商談は嫌」と言われたら
・髙田明氏に聞く伝える極意「必要量の10倍情報を集めよ」(11月13日公開)


 「ムジンノフクヤ」は今年8月、東京・中野の商店街にオープンした古着店だ。一見、よくある古着店だが、コロナ問題が起きる前から多くの中小企業が抱えてきた「売り方」の悩みを解決するヒントとなる仕組みを取り入れている。

約300着も陳列するが、店員の視線を気にせずにじっくり選べる(写真:尾関裕士)
約300着も陳列するが、店員の視線を気にせずにじっくり選べる(写真:尾関裕士)

 その注目すべきポイントとは「ムジンノフクヤ」という店名が示す通り、24時間営業の間、販売スタッフが1人もいないこと。古着選びから試着、精算までをお客自身で完結してもらう。

 ムジンノフクヤを運営するダルマン(東京・文京)は、これまで古着をインターネットで販売してきたが、リアル店舗で無人販売するアイデアも1年ほど前から温めていたという。

 「ネット通販はコストを抑えやすいとされているが、当社の場合、配送料や販売プラットフォーム会社に支払う手数料を含めると、実はそれほどでもない。新品と違って古着は1点物なので、実物を触ってから買いたいというニーズも一定数ある」と平野泰敬社長。

 コロナ下では、人同士の非接触や非対面が求められるようになった。無人販売による商品の破損や盗難を気にするより、先手を打って挑戦するほうが重要と考え、出店を決断したという。

リスク対策はアナログ手法で

 とはいえ無人販売に取り組む以上、万引き対策は必要になる。米国で展開中のレジ無しコンビニ「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」など、省人化に取り組む小売り各社がIT(情報技術)で万引きリスクを抑えようとしているのに対して、ムジンノフクヤはアナログな手法で取り組む。

次ページ リメイクで高収益体質に