経営者はいつも不機嫌、管理職は上に忖度ばかり、現場の若手は無表情でやる気が見られない。経営戦略は形だけで中身ゼロ。なのに社員は「とにかく頑張ってくれ」と成果だけが求められる。そんな職場で、次々と社員が病んでいく──。今の日本にはこんな組織、チームが多い。人材組織開発コンサルタントの齋藤秀樹氏が「強いチームの創り方」を教える。

齋藤秀樹
さいとう・ひでき

アクションラーニングソリューションズ代表取締役。一般社団法人日本チームビルディング協会代表理事。富士通、SIベンダーなどにおいて人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門などを経て人材組織開発コンサルタントとして独立。ジョージワシントン大学大学院人材開発学部マイケルJ.マーコード教授より直接、アクションラーニングコーチ養成プログラムを受ける。現在は組織開発の有効性を広く一般に広める活動に力を注ぐ

 会社が「行きたくない場所」になっていて、会いたくない人に会い、やりたくない仕事をする場になっているという人は少なくありません。そして、経営者はこのことに気づいていない。「うちの会社は大丈夫」と楽観視するばかりで、社員の本音を分かっていません。それがいずれ会社を窮地に追い込むことになるとも知らずに……。 

 社員が「行きたくない職場」に通い続ければどうなるか。心を少しずつ削られて、メンタル面で不調を訴えるようになるでしょう。1人が体調を崩すとまた1人と、連鎖的に職場が病んでいきます。

 今、こうした「病んでいる職場」が日本中にあふれています。この現状は、経営者だけの問題ではありません。管理職や同僚など、組織やチームを構成するすべての人が考えるべきことです。チームを創るのは「トップやリーダーの仕事」ではなく、チームに関わる「すべての人の仕事」です。

 皆が働きがいを持って仕事をし、成果を出し続けるのが「強いチーム」です。そんなチームを創りたいのであれば、チームに関わるすべての人がチーム創りを意識し、積極的・協力的に動くことが重要です。このことをまずはしっかり心に留めておいてください。

感覚がまひしている怖さ

 日本の病んでいる職場の特徴には、「上への忖度」「事なかれ主義」「他者依存」の3つが蔓延していることが挙げられます。

※本講座で紹介している図はすべて、齋藤秀樹氏の著書『Good Team 成果を出し続けるチームの創り方』の図を基に編集部で制作したものです

 これらが職場で蔓延している理由の1つは、子供の頃から家庭や学校などで「おとなしく先生の言うことを聞きなさい」「協調性を持ちなさい」と言われ続けてきたことが関係しているように思えます。

 「面倒を起こさない子が良い子」という価値観が暗黙の了解のように浸透し、子供たちは画一的な箱の中に収められる。そうなると個性を生かせず、意見が言えない大人になっていきます。

 そもそも「協調」という言葉の意味は「利害の対立するものが、力を合わせて事に当たること」(大辞林)です。個性を存分に生かし、意見を出し合う必要があるわけです。そこには忖度や事なかれ主義、他者依存の姿勢はありません。

 ダイバーシティ(多様性)の考え方が広がっている今でも、本来の意味とは違う「協調」を強いる経営者は少なくありません。

 他者依存は、「リーダー依存」と言い換えてもいいでしょう。これは「リーダーの決断が遅い、指示が悪い」と批判する社員に多い。批判をしてストレスを発散しているだけで、自分がリーダー依存、指示待ち人間になっていることが分かっていないのです。

 「きっと誰かがやってくれる」とう他力の姿勢の社員が多いと強いチームは創れません。

 このような問題があることは誰しも分かっているはずなのに、手を打とうとしないのはなぜか。

 それは会社の中を見渡しても、友人の社内事情を聞いても、自分たちと同じような組織・チームだらけだからではないでしょうか。そうなると、諦めの気持ちが生まれ、チームに対する不満は薄れ、興味が湧かなくなります。もう、感覚がまひしているわけです。

 こうした感覚のまひが何より怖い。早々に手を打たないと手遅れになるでしょう。

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