創業者の死後、お家騒動が起きた定食チェーン、大戸屋ホールディングス(HD)が再び世間を賑わせている。外食大手のコロワイドがTOB(株式公開買い付け)により、大戸屋を実質子会社化した。新体制で取締役に戻ることが確実視される創業者の長男、三森智仁氏に問題の真因を聞く。
(聞き手 ・ 日経トップリーダー編集長 北方雅人)

1989年生まれ。2011年中央大学法学部卒業後、三菱UFJ信託銀行に入社。13年大戸屋ホールディングス入社。14年「ビーンズ戸田公園店」店主。執行役員社長付を経て、15年6月に常務取締役海外事業本部長。16年2月退任。17年スリーフォレスト社長として、高齢者向け宅配事業に乗り出す。著書に『創業家に生まれて~定食・大戸屋をつくった男とその家族』
2015年に、大戸屋HDの実質的な創業者である三森久実さんが病に倒れて他界した直後から、お家騒動が発生しました。創業家と会社側が対立し、三森智仁さんは取締役を辞任。一連の騒動をメデイアは大きく取り上げました。
17年に創業者功労金が支払われ、いったん騒動は解決したかに見えましたが、昨年、智仁さんとお母様(三森久実氏の妻)が保有していた大戸屋株をコロワイドに売却。これ以降、コロワイドと大戸屋側の対立が勃発します。どうしてコロワイドに株を売ったのですか。


三森:元をたどると、父の株式相続などで10億円の相続税が発生したのですが、4億円が足りませんでした。父は生前、会社やメインバンクと話し、創業者功労金を8億円出すスキームを描いた。税引き後の4億円のキャッシュで相続税を払うというものです。
ところが、その約束を会社側が反故にし、2億円に減額されたため、最終的に私には3億円の銀行借り入れが残りました。その返済について銀行からはせっつかれていました。それで私が持っていた大戸屋株(保有比率5・60%)を手放すことにしたのです。
ではなぜ、(同13・07%を持っていた)母も同時に売却したのか。昨年2月、大戸屋のアルバイトが(ズボンを脱ぐなどの)不適切動画をSNS(交流サイト)に投稿した、いわゆる「バイトテロ」が起き、「このまま株を持ち続けるのが怖い」と感じたからです。
怖い、とは。
三森:父が代表だった頃の従業員は皆、プライドを持って仕事をしていたので、こうした不祥事はあり得なかった。しかも、この事実を私たちが知ったのはニュース報道です。創業家の筆頭株主が経営側とコミュニケーションが取れず、会社が今どうなっているのかが皆目分からない。バイトテロに限らず、決算内容や取締役選任の説明なども全くなかった。
そんな状態で株を持ち続けることに、母は怖さを感じていました。株主の権利を行使して、きちんと経営をけん制できる会社に託したほうが、大戸屋にとってもいいのではないか。それで昨年3月、証券会社に頼み、大戸屋の銘柄に関心がありそうな外食企業を10社、リストアップしてもらいました。
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2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。 日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。
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