
Q. 2017年、「プロが選ぶホテル・旅館100選」36年連続1位から3位に転落。返り咲きを目指し、どんなことに取り組んだか。
A.宿泊客が満足するおもてなしとは何かを見直した
今日こちらまでお越しいただくのに、「なんて遠いんだ」と思われましたよね。こんな遠くまで、わざわざ来てくださるお客様には感謝の気持ちでいっぱいです。だからこそ誠心誠意おもてなしをして、お客様に喜んでいただかなければと思うのです。
コロナ禍前まで、毎年の社員旅行が恒例でした。バスを何台も連ねて、新潟や長野などに出かけました。みんなの気持ちを1つにするという目的のほか、お客様も長距離の移動を経て、私たちのところに来てくださっているのだと、社員に身をもって理解してもらうためでもあります。
社員の態度に危機感

1968年石川県生まれ。91年慶応義塾大学商学部卒業後、丸紅に入社。97年ハワイのシェラトン・ワイキキ・リゾートホテルに勤務。99年に米コーネル大学大学院ホテル経営学部修了後、加賀屋に入社。2008年に日本青年会議所会頭。14年から現職
加賀屋は、2016年まで業界紙の「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で36年連続日本一に選出されていました。それに誇りを持って働いていた社員も多かったと思います。
ただ、一方でおごりがあったかもしれません。お恥ずかしい話ですが、社員旅行の宿泊先で酔った社員が「俺たちは加賀屋だぞ」と言ったことがありました。決してあってはならない態度です。
それからしばらくたった16年9月のこと、加賀屋で食中毒が発生してしまいました。そして、この一件が大きく影響したのでしょう。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で、第3位に落ちてしまいました。私が社長に就任して3年目のことでした。
私自身、日本一に輝きながらも、自社のサービスに何となく違和感がありました。しかし当時、社内には「1位なのだし、これまでのやり方を変える必要はない」という空気があった。何かを変えるには労力がかかりますし、変えずに済むならそのほうがいいというのが人間の心理でしょう。
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