突然ではありますが、今回は本連載の最終回となります。過去20回、日中間における市場環境の違いや商習慣、および、それらがもたらすビジネスチャンスなどについて、僕ならではの考え方や分析をお届けしてきました。

 そこで最終回は、僕のさまざまな経営哲学の根幹をなす事業モデルであり、孫正義さんが命名した「タイムマシン経営」、特にその中でも第2フェーズの「タイムマシン経営2.0」や、僕の会社経営に大きな影響を与えた中国人材業界の「三種の神器」のアプリについてお話ししたいと思います。

 まずはタイムマシン経営から。これは世界各国の産業を観察し、1つの国で成功したビジネスモデルを別の国に持ち込み、その国に適したアレンジを加えて展開する経営手法です。

 孫さんのタイムマシン経営は、2つの時代に分かれています。第1フェーズは米国の成功事業を日本に持ち込んだ時期で、そして第2フェーズは中国、インド、韓国などの事業を日本に持ち込んだ時期となります。

 1.0については皆さんもご存じかと思いますが、第2フェーズの重要な成果であるPayPayについはどうでしょうか。

 孫さんは、これまで自身が最も成功したと言える中国のアリババ集団への投資を参考に、フィンテック領域において日本に潜む巨大な成長可能性に気づきました。そこでPayPayをコアとする決済、モール、保険などの機能を集約したプラットフォームをいち早く、つくり出したのです。

 中国から見れば、PayPayは、いわば日本のAlipay(アリペイ)で、世界的に見ると後発です。にもかかわらず、その技術やマーケティング手法を使った日本で大成功を収める大きなパワーは、タイムマシン経営のすごさを物語っていると言えるでしょう。

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