小松ばね工業は東京都大田区を本拠に、さまざまな機械・精密機器に使われるばねを製造する。全社員が日々共有、方向性を確認する「経営計画書」は、コロナ禍による制約の中、業務継続の支柱となった。

東京生まれ。大学卒業後、計測機器メーカーに勤務。2003年小松ばね工業入社。14年から現職(写真=稲垣純也)
多様な精密機器部品として、線径が最小20マイクロメートルという微細なばねの加工も手がけます。最近の動向を聞かせてください。
小松万希子社長:当社はすべて顧客からの特注品です。最も精度に厳しいのは医療用途で、図面と実際の製品とのずれの範囲である公差は、どんどん厳しいものが求められるようになっています。
製造時に公差を厳しくセッティングすると歩留まりが下がるので、いかに技術を上げて、コストを下げるかが課題です。

半導体系の部品も微細化が進んでいます。技術革新がめざましい分野なので、ばねを使わずに同等の機能を実現するものも出てきています。常に変化していくので見極めていかないといけません。いつまでも需要があると思っていたら大変なことになります。
常に新しい分野や用途の試作に取り組んでいるのですね。
小松:当社は国内3拠点に工場があり、試作段階で「どうやって作るか」を3工場でやり取りして相談もしています。最近は、比較的小さな企業からの試作依頼が増えています。「複雑なばねを作ってくれ」という依頼が多いですね。今はCAD(コンピューターによる設計)が普及しているので、簡単にCADで図面を書いてこられても、実際には非常に製造が困難というケースもあります。
材料も多くの種類があり、同じ線径でも材料が変わると巻けないということも。現場は本当に難しい課題に日々取り組んでいます。
「社長は死ねない」
コロナ禍以降、会社はどのような対応をしてきたのですか。
小松:昨年1月頃からコロナの影響が出始め、4月から7月頃までがピーク。特に海外向けの生産が影響を受けました。
社内の感染対策は2月に着手していました。社員にある程度の安心感を得てもらうように、出社にリスクがあると判断した時期は交代制で休むようにしました。
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