AI通訳機「ポケトーク」などで知られる東証1部上場のソースネクスト。トップ自らが米シリコンバレーに移住し、独自商品開発に磨きをかける。日米の経営者マインドの違いなどを聞いた。

(聞き手 ・ 日経トップリーダー編集長 北方雅人)

松田 憲幸[まつだ・のりゆき]
ソースネクスト 会長兼CEO
1965年兵庫県生まれ。大阪府立大学工学部数理工学科卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。1996年にソースネクストを設立。2006年に東証マザーズ、08年に東証1部に上場。12年から米シリコンバレーに移住。日米を行き来しながら経営に当たっている。21年2月に会長就任。「驚速」「特打」のほか、更新料無料のウイルス対策ソフト「ZEROウイルスセキュリティ」をはじめ、累計5000万本以上のソフトウエアを販売してきた。21年3月期の売上高は約129億円

2012年に米シリコンバレーに移住して9年。そんな松田さんの目に、コロナ下の日本と米国の違いはどう映りますか。

松田:コロナ前も今も、アメリカ人は楽観的で笑顔が多い。日本に帰るとコロナの状況が永遠に良くならないのではないかと感じられるくらい、暗いニュースばかりが流れている。だから私は、日本の家にテレビは置いていません。

<span class="fontBold">ランチミーティングをする松田会長(コロナ前の撮影)</span>
ランチミーティングをする松田会長(コロナ前の撮影)

 アメリカの株価が上がり続けているのも、「今よりもっといい未来が来る」とみんなが考えているからです。アメリカにいると、何でも実現できるような気がしてくる。私がアメリカに来て、一番学んだのはその精神です。周りの普通の人がどんどん成功していくのを見ていると、自分もできるんじゃないかと思えてくるのです。

自分の限界を取り払う

なぜ違うのでしょう。

松田:子供の教育では、日本人はみんなと同じにするのがいいという考え方を大切にしますが、アメリカ人はいかに他者と差異化するかという考え方を教えます。「なぜあなたはこれができないの」と追及はしない。それぞれが、それぞれの夢を持っている。

 大きな夢を公言してもばかにされません。「(フェイスブック創業者の)マーク・ザッカーバーグみたいになる」とアメリカ人は平気で言いますが、日本でそんなことを言ったら「無理に決まっているじゃないか」と笑われるでしょう。

 また、米国人は「Congratulations(コングラチュレーション)」という言葉をよく使います。例えば初対面の人にソースネクストの事業の変遷を説明すると、「IPO(新規株式公開)おめでとう」と言われる。日本ではIPOをした直後なら「上場おめでとう」と言うけれど、10年以上も前のIPOのことを今さらたたえないですよね。

 でも、アメリカでは称賛される。「Congratulations」の裏には、「いずれ自分もそうなってみせます」という気持ちが確実にありますね。アメリカは広いので一概にはくくれませんが、ここシリコンバレーでは、物事に限界はないとみんなが思っています。

松田さんも限界を取り外すことができましたか。

松田:ええ。やはり、身近な会社がどんどん大きくなりますからね。料理の宅配を手がけるドアダッシュの創業者トニー・シューと知り合った13年、彼は自分で配達もしていました。私の家に配達に来ると、必ず後で「今日利用してみて、どう思う?」とメールが来る。

 「日本食レストランがないよね」と言うと、いつの間にかちゃんと入っている。そんなやり取りをしているうち、あれよあれよという間に何千店、何万店の飲食店と提携し、昨年株式上場して時価総額が6兆円にもなりました、

続きを読む 2/3 移住を決めた3つの理由

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2293文字 / 全文3947文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「日経トップリーダー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。