アパレル業界は市場が激変している。戦後日本を支えた繊維産業は、他業界に先駆けて海外への生産移転が進んだ。その後も国内中小工場は必死に戦ってきたが、いよいよ大きな転換点を迎えている。例えば、ワークマンのように、アパレル業界に活気をもたらす企業は次々に現れている。それは中小企業でも同じだ。
ここでは激変するアパレル業界で戦う中小企業の事例を通し、他業界の企業にこれから待ち受ける針路を探った。そこから見えるメインテーマは、「個性の出し方」である。
<目次>
(1)【作り方】肌着の下請け会社が「着る岩盤浴」へ転じた理由
(2)【売り方】柔道着の生地を使った目新しい商品が話題呼ぶ
(3)【あり方】消費者は会社をふるいにかけている(10月13日公開)
How to sell 【売り方】
ジャパネットたかたの髙田明社長は、テレビ通販の市場を切り開いた。新しい売り方をどんどん試してみるのは、経営者の基本要件だ。百貨店や量販店頼みでなく、新たな販路で積極展開する会社を紹介する。
近年は店舗だけでなく、ECサイトで商品を販売するケースが増えている。アパレル業界でも、一昔前まではネットで衣服を買うことに対して「実物を見たり、試着したりしないと不安」とためらう人が多かったが、今では「自宅に居ながら気軽に服を選べる」とむしろメリットが先に立つ。
経済産業省が2021年7月に発表した電子商取引に関する市場調査によると、アパレル(衣類、服装雑貨など)のEC市場は、ここ数年ずっと右肩上がりで、20年の市場規模は2兆2200億円に上った(前年比約16%増)。
コロナ禍で多くの消費者が外出を自粛し、実店舗の営業にも制限がかかったためで、現在はアパレル製品の2割近くがECで買われていると見られる。
ただし、「ネットで販売すれば売れる」という単純なものではない。今はEC市場も競争が激化している。単なるEC販売とは違うアプローチを模索する必要があるのだ。ここでは売り方に知恵を絞り、成果を上げている企業を紹介する。
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