アパレル業界は市場が激変している。戦後日本を支えた繊維産業は、他業界に先駆けて海外への生産移転が進んだ。その後も国内中小工場は必死に戦ってきたが、いよいよ大きな転換点を迎えている。例えば、ワークマンのように、アパレル業界に活気をもたらす企業は次々に現れている。それは中小企業でも同じだ。

 ここでは激変するアパレル業界で戦う中小企業の事例を通し、他業界の企業にこれから待ち受ける針路を探った。そこから見えるメインテーマは、「個性の出し方」である。

<目次>
(1)【作り方】肌着の下請け会社が「着る岩盤浴」へ転じた理由
(2)【売り方】柔道着の生地を使った目新しい商品が話題に(10月12日公開)
(3)【あり方】消費者は会社をふるいにかけている(10月13日公開)


How to make 【作り方】

(写真/PIXTA)
(写真/PIXTA)

自社ブランドの製品を持つには、自社技術の把握が必要だ。激戦のアパレル業界で、むやみに正面突破するのは無謀である。中小企業ならではの攻め方を、2つの事例から学ぼう。

<span class="fontBold">加茂繊維の角野社長。大学で建築を学び、もとは建築業界で働いていた。業界内外の人脈を開発・販売に生かしている</span>
加茂繊維の角野社長。大学で建築を学び、もとは建築業界で働いていた。業界内外の人脈を開発・販売に生かしている

 大手企業に従うのが、中小企業。そんな従属関係はどの業界にもあるが、アパレル業界も同じだ。

 「アパレル業界は常軌を逸している」──。レッグウォーマーなどを製造販売する加茂繊維(岡山県津山市)の角野充俊社長はおよそ20年前のある出来事を思い出して、このように吐き捨てる。

 同社はもともとグンゼの下着を作っていた。だが角野社長は、下請けだけではリスクが大きいと考え、アウターウエアの受託生産に乗り出し、約2年をかけて技術に自信がついたところで、自社ブランドを立ち上げた。

 ある大手小売りチェーンにいた人と共同で商品を企画した。「その大手小売りの紳士用品部長は、本社会議室に部下を集めて、『加茂繊維の商品を全面的に応援するぞ』と奮起を促した。それを目の前で見ていた私はうれしくて、舞い上がった」(角野社長)。

 しかし発売から1カ月後、「この価格では売れない」と早くも値下げの相談を持ちかけられた。できないなら返品するというので、仕方なく応じると、2週間後にさらなる値下げの要請が来たという。

 当時の契約は、店で商品が売れた時点で小売り側の仕入れとする「消化仕入れ」だった。価格決定権は加茂繊維側にあるはずなのに、自由が利かない。「買い取り」契約に変えても、利益が出ない価格が示されるまでさほど時間はかからなかった。

続きを読む 2/3 アパレルは2年でやめた

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