板金加工を中心にさまざまな素材、加工方法を手がける井口一世。高い精度を保証する加工技術と、多様な作り方を示せる提案力を強みとする。社員の大半は文系出身。常識にとらわれない発想が新しい加工技術を生む。

2001年の創業時から、板金加工による特注品、試作品の製作を手がけています。コロナ禍以降も売上が伸びているのですか。
井口:この2、3年で、問い合わせをいただくお客様の数も、業種も増えています。コロナ禍でサプライチェーンの状況が変わり、海外に生産を出せなくなったり、生産のロットが小さくなったりした結果、当社が得意な部分の仕事が増えたという影響はあるでしょう。
基本的に当社はどんな注文でも受けます。受けてから作り方を考え、そこから新しい製造方法が生まれ、これまでどこもできなかったものが作れるようになるという結果になっています。
一口に何でも注文を受けると言いますが、現在はどのようなものの製造が多いのですか。
井口:非常に高い精度と品質を要求されるものでは、半導体製造装置や航空部品など。一方では家電とか住宅設備関連機器の部品なども作ります。素材も金属だけではなくプラスチック、木材なども対応します。
多様な加工方法が強み
金型を使わずに作る製法を板金加工の技術で追求してきたそうですね。

井口:創業時、日本の産業の中で世界一になれるものは何かと考えました。日本人の特性を考えるとやはりものづくりだが、主流である金型を作って大量生産する方法ではあまり高い付加価値が得られない。しかも一定量を生産すれば金型は使えなくなり、生産は終わってしまいます。
もし金型なしで同等のものが作れたら画期的だと考え、プレスや板金、鍛造といった金属塑性加工を手がけることにしました。
ただし加工方法には一長一短があります。切削など複数の加工方法を組み合わせ、ニーズに合ったコスト、精度、納期を実現する最良の作り方を提案できるところが大きな強みだと思います。
高い精度を保証
例えば2メートルほどの大きさのものを作るときの誤差が約20ミクロン、40センチぐらいのもので誤差が約2ミクロンという作り方をしています。通常の板金加工に比べて1桁から2桁、精度が上がります。

直角に曲げたときの誤差は90度に対してプラスマイナス0.5度ほどです。金属の板の場合、分子の向きがあるため曲げの方向によって精度が変わりますし、地磁気の影響によっても変わってしまいます。作業環境などいろいろな条件が重なって初めて実現が可能なレベルの精度です。
もし一つひとつの部品が基準内の誤差に収まっていても、10種類の部品を組み立てれば10倍のずれが生じます。組み立てたときに良い精度が出せるよう、ばらつきなく精度を上げる必要もあります。
当社は作るだけでなく、本当に求められる精度でできているか検査して証明するところにも力を入れています。そのために分解能1ナノメートルという高機能の3次元測定装置を導入しています。

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