経営者として基礎的なスキルや心構えをたたき込んでくれる先輩経営者がいるだろうか。多くの経営者を取材していると、中小企業経営者には、そのような先輩経営者を持たない人が少ないように感じる。

 今回は、経営者として実績のある人たちに、自身の経験から得た知見をアドバイスというかたちで、極力具体的に語ってもらった。登場する3人の経営者は、非創業者という共通点を除き、業種も規模もさまざまだ。

 「ケースバイケースだから、一概には言えない」というのは正論だが、経営者を志す人に対し何もアドバイスできない。また、「誠実であれ」「決断力を持て」というような助言も、同じく正論だが具体性に欠ける。

 学問でもスポーツでも、入門者の習熟を促すような、「まずはこれをできるようになろう」というメニューがある。それらを身につけていく過程で、自身の適性や好みに合わせて変化していくもののはずだ。3人のアドバイスを読み、何か1つ、読者の行動変化につながれば幸いだ。

(写真/PIXTA)
(写真/PIXTA)


深中メッキ工業

もともと引き継ぐ予定ではなかったが、家族の事情で急きょ家業に加わることになった深中メッキ工業(東京・墨田)の深田稔社長。入社直後に社長である父が急逝し、経営についてもめっき加工についても教わらないまま経営者となった。自身の試行錯誤の経験を基に、墨田区の経営者にアドバイスもしている。

<span class="fontBold">深田 稔(ふかだ・みのる)社長</span><br />1964年東京都生まれ。大学卒業後、大手製菓メーカーの営業職を経て91年に深中メッキ工業に入社。父の急逝後、母と共に苦しい経営状態の会社を立て直し、2009年に社長就任。従業員10人の中小企業だが、特殊なめっき技術でさまざまな分野で利用されている(写真/稲垣純也)
深田 稔(ふかだ・みのる)社長
1964年東京都生まれ。大学卒業後、大手製菓メーカーの営業職を経て91年に深中メッキ工業に入社。父の急逝後、母と共に苦しい経営状態の会社を立て直し、2009年に社長就任。従業員10人の中小企業だが、特殊なめっき技術でさまざまな分野で利用されている(写真/稲垣純也)

中小企業経営者として絶対にやらなければいけないことは何でしょうか。

深田:他人にそろばんを預けないことです。経営に関する数字は自分で把握しないといけません。

 付き合いのある信用金庫は、6割くらいの中小企業経営者が、自社の資金繰り表を作れないと言います。中小企業では自分で作れないと絶対にいけません。

 私も数字に強いほうではなかったので、とにかく勉強しました。バランスシートでも損益計算書でも、分からないところがあれば税理士に相談して、納得するまで教えてもらいました。

 お勧めするのは、毎月試算表を自分で作成して、メインバンクに提出することです。自社の数字に強くなるし、融資が必要なタイミングでなくとも提出し続けることで、金融機関からも信頼されます。結果的に必要な融資を受けやすくなるでしょう。

続きを読む 2/6 改善も決算書から

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