8月24日、京セラ創業者の稲盛和夫氏が亡くなった。「経営12カ条」「六つの精進」「アメーバ経営」……。稲盛氏が経営にもがく中でつくり上げたその哲学体系は単なる経営にまつわる技法の領域をはるかに超え、日々の決断に悩む経営者の心の拠りどころとなっている。稲盛氏が遺したものの重みをあらためて見つめ直す。

(写真/菅野勝男)
(写真/菅野勝男)

・熱狂的「追っかけ」経営者が語る稲盛和夫の魅力

・「あいつはプロやな」と言ってくれた カメラマンが見た稲盛和夫
 (10/4公開)

・心を起点に自分と会社を変革 盛和塾で経営者たちは生まれ変わった
 (10/5 17時公開)

「稲盛和夫の追っかけ」として、全国を飛び回り、時には海外にまで足を運んでいた経営者がいる。稲盛氏のどのようなところに魅了されていったのか。「追っかけ」の1人、ダックスホールディングスの大畑憲会長に、稲盛氏の「人としての魅力」を聞いた。

大畑会長の自宅には、稲盛氏の大きな写真を額縁に入れて飾っている。大畑会長の隣にいるのは奥様で、「実は私より妻の方が塾長の熱狂的なファンなんです」と大畑会長。抱き抱えているのは9歳の愛犬、名前はセラ。「京セラ」の「セラ」から取った名前だ
大畑会長の自宅には、稲盛氏の大きな写真を額縁に入れて飾っている。大畑会長の隣にいるのは奥様で、「実は私より妻の方が塾長の熱狂的なファンなんです」と大畑会長。抱き抱えているのは9歳の愛犬、名前はセラ。「京セラ」の「セラ」から取った名前だ

 稲盛氏は経営手腕もさることながら、その人柄も多くの人を引きつけた。常日ごろ、中小企業経営者には「惚れさせんかよ」(従業員に惚れられる経営者であれ)と助言をしていた稲盛氏だが、自身はまさに「誰もが惚れてしまう人」であった。

目線を合わせてくれる

 「塾長の魅力はたくさんあって1つには絞り切れませんが、どんな人であっても必ず相手の目線に合わせて、『ど真剣』に向き合ってくれることではないでしょうか」

 こう語るのは、盛和塾山陰の代表世話人を務めていたダックスホールディングス(鳥取県米子市)の大畑憲会長だ。盛和塾では年に十数回、塾長を務める稲盛氏も出席する塾長例会を開催していたが、全国各地、それこそ海外で開かれる例会まで欠かさず出席する「追っかけ」経営者が何人もいた。その中の1人が大畑会長である。

稲盛氏との思い出のツーショット写真も部屋に飾っている。どちらも大畑夫妻にとって大切な宝物だ。写真の脇には、稲盛氏が大切にしていた「敬天愛人」の言葉が入ったうちわもあった
稲盛氏との思い出のツーショット写真も部屋に飾っている。どちらも大畑夫妻にとって大切な宝物だ。写真の脇には、稲盛氏が大切にしていた「敬天愛人」の言葉が入ったうちわもあった

 熱狂的なファンとして、稲盛氏を長年見てきた大畑氏は続ける。

 「例えば、盛和塾の塾長例会で塾生と交わす経営問答では、日ごろの悩みを吐露する人が多いのですが、塾長はどんな悩みに対しても心の奥でしっかり受け止め、自分がこれから語る言葉が相手の人生を変えることになる可能性まで考慮し、『よく聞け、お前さんはな』と助言をされます。質問内容によっては『ようやっとる』とねぎらうこともあれば、時には強い口調で『何をやっとるんだ!』と叱りつけることもありました。塾長からは真剣さが伝わってくるので、叱っていてもそれがすべて相手のことを思ってのことと分かるんです」

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