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コロナ禍にも耐える独自経営をつくり出した東京の居酒屋チェーン、ゲイト。漁業に乗り出し、食材を自社調達する。社員もフリーランス化している。環境変化に強い、ゲイトの創意工夫は経営のヒントにあふれている。

五月女社長は毎月1回、三重県熊野、尾鷲市に行き、自ら漁もする(写真/臼井美喜夫)

 今年5月21日、大阪府東大阪市の酒類商社を訪問した東京の居酒屋チェーン、ゲイト(東京・墨田)の五月女圭一社長は、商社の経営者と話すうち、強く確信した。「これは企業が利用する居酒屋需要は長く戻ってこないな」。

コロナ禍で居酒屋店舗を1店に絞った(写真/清水真帆呂)

 ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大で4月7日に発出されていた緊急事態宣言が大阪府、京都府、兵庫県などで解除された当日のこと。新型コロナの猛威はやや収まり、経済活動も元に戻っていくかと期待が広がろうとしていたときだった。

 五月女 「企業の会食、宴会ニーズはどうですか」

 商社経営者 「企業客が中心の外食店や宴会場からの食材発注は、まだ出てこないねえ」

 短いやり取りの中で五月女社長はピンと来た。企業が先行きを警戒していなければ、宴会需要が戻る兆しがあってもいいはず。そうなっていないということは……。「やはり企業がカネを使わなくなっている」。

 その日、東京に戻ると五月女社長は即座に決めた。「もう店は撤退しよう」。都心に展開していた10店の居酒屋を、千代田区神田の1店だけにし、残る9店を一気に閉めることにしたのだ。

 大胆にも思える経営判断を下したのは、ゲイトの競争力の源泉を居酒屋という店舗そのものに置いていないからだ。真の強みは、自ら培ってきた食材の独自調達力であり、自立を促してきた人材の力。そう考える五月女社長は居酒屋自体にしがみつくつもりはなかった。