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自治体ビジネスに3兆円というかつてない規模の補正予算が組まれた。新型コロナの感染拡大後、自治体の抱える課題は大きく変化。中小企業にとっては自社の強みを生かした事業提案の好機到来だ。

古田智子(ふるた・ともこ)
LGブレイクスルー社長
1965年生まれ。慶應義塾大学卒業後、建設コンサルタント会社に入社。国や自治体を事業領域としたコンサルタント業、自治体職員の人材育成などに携わる。2013年LGブレイクスルーを設立。16年一般社団法人公民ビジネス活性化協会を設立、代表理事に就任(写真/菊池一郎)

「適者生存」。チャールズ・ダーウィンが「進化論」で使った言葉として知られるが、この言葉の生みの親は彼ではない。社会進化論の提唱者であり哲学者のハーバート・スペンサーが1864年に世に問うた概念である。後に彼の影響を受けたダーウィンが進化論で取り上げ、世界中に知れ渡った。

 そう、「適者生存」の生まれは自然科学ではない。我々が日々ビジネスで向き合う、ヒト・モノ・カネが交錯してせめぎ合っている社会の進化に出自があるのだ。

 東京オリンピック開催を迎えて沸き立っていた2020年。日本に、これほど適者生存を突きつけられた局面があっただろうか。

 帝国データバンクの調査によれば、新型コロナの影響で倒産に追い込まれた企業は9月14日時点で518社に上る。また、同月1日に財務省からリリースされた「四半期別法人企業統計調査」で、金融・保険業を除く企業の4~6月期の対前年同期比は、売上高が17・7%減、実に経常利益は46・6%の減少となった。

 この状況を適者生存の一言で片づけるのは、あまりにもむごいことだ。

景気に左右されにくい

 筆者の経営するLGブレイクスルー(東京・千代田)には現在、自治体ビジネスに取り組みたいという相談が数多く寄せられる。

 もっと具体的にいえば「新型コロナで民間ビジネスが厳しい。自治体ビジネス市場に参入して、活路を見いだすにはどうすればいいか」という問い合わせだ。

 返信メールを打ちながら脳裏をよぎるのは、まだ私がコンサルタント会社で働いていた08年のリーマン・ショック。当時も、自治体ビジネス市場では見かけなかった民間企業の参入が相次いだ。

 そんなことを思い出しながら、企業の意思決定に「いいぞ!」と心の中で声援を送っている。

 どんなに太い大黒柱でも、1本だけだと土台が崩れたらひとたまりもない。たとえ細くても、もう1本の柱を立てておけば、最悪の事態は免れることが可能だ。

 その点、自治体ビジネス市場は、前年度に民間企業に発注する業務や金額が既に決まっており、直近の民間需要が冷え込んでもすぐには影響を受けにくい。

 そのため、たとえ民間市場でビジネスが厳しくなっても、自治体ビジネスで一定の数字を上げる体制を構築しておけば、経営のダメージを緩和できるのだ。

 自治体ビジネスに参入したことのない企業が、この好手を指そうとする前に押さえておきたい点がある。それは、新型コロナによる自治体ビジネス環境の変化だ。

 ここでは「地域課題とニーズの変化」「大規模な財政措置」の2点をひも解いていこう。