『嫌われる勇気』の著者で、哲学者の岸見一郎氏がリーダーのあり方を説く連載の第43回。今回のキーワードは「権威」。権威には「合理的な権威」と「非合理な権威があると岸見氏は指摘する。

 社会心理学者のフロムが権威について次のように述べています。権威は、一般に信じられているように、専制的で非合理的な権威を持つか、権威をまったく持たないかという二者択一ではなく、真の問題はどんな種類の権威を持つかであり、「非合理的な権威」と「合理的な権威」を区別しています(Man for Himself)。

 合理的権威は能力に由来します。ある人の権威が尊敬されるのは、その人が他者から委ねられた仕事を巧みに処理できるからであり、脅したり、魔術的な力で賞賛させたりする必要もありません。

 フロムは、合理的権威を学生と教師との関係を例に説明しています。教師が学生に対して持っている権威が合理的であるのは、その権威が「理性」の名において行使されるからであり、理性は普遍的であるが故に、それに従うことは決して服従することにはなりません。

 学生は教師から誤りを指摘されても、納得できますし、反対に、教師が学生から誤りを指摘されてもそれを受け入れるでしょう。

「合理的な権威は、それに従う人が絶えずそれを吟味し批判することを許すだけでなく、それを要求さえする」(前掲書)

 教師と学生の利害は、理想的な場合には、同じ方向を向いているともフロムは指摘しています(On Disobedience and Other Essays)。教師は学生を伸ばすことができれば満足であり、それができなければ、その失敗の責任は教師と学生にあります。

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