人口減少、デジタル化など、事業環境が大きく変わる中、新規事業を模索する中小企業経営者が増えている。頭を軟らかくするヒントをスタートアップの発想に学ぼう。今回登場するのは、VRコンテンツ作成サービスを提供するスペースリーの森田博和社長。コロナ禍で対面接客が難しくなった不動産仲介、飲食店や製造業の社員研修などで活用が広がっている。

今月の起業家

スペースリー社長
森田 博和
(もりた・ひろかず)氏

1980年東京都生まれ。2005年東京大学大学院で航空宇宙工学の修士を取得。同年に経済産業省入省。13年シカゴ大学にてMBA(経営学修士)取得。同年にスペースリーを設立

 不動産仲介のウェブサイトをスマートフォンで開き、気に入った物件の再生ボタンをタップすると、部屋の様子が表示される。写真を指でスワイプすると動きに合わせて視点が変わり、画面上のアイコンをタップすると、説明や窓からの景色を映した動画を表示する。

 コロナ禍で対面接客が難しくなった業種では、こうしたVR(仮想現実)を使うところが増えている。不動産仲介のほか、飲食店のスタッフ教育、製造業の組み立て手順研修に使う例もある。

<span class="fontBold">スペースリーのサービスで作成した不動産物件を紹介するVRコンテンツのイメージ。室内を歩き回る感覚で、物件を見られる</span>
スペースリーのサービスで作成した不動産物件を紹介するVRコンテンツのイメージ。室内を歩き回る感覚で、物件を見られる

外注せずにVR活用

 スペースリー(東京・渋谷)はこうしたVR映像の作成、編集から配信用QRコードの作成・アクセス分析などを一貫してクラウドサービスとして提供する。「緊急事態宣言が出た4月には問い合わせが5倍に増えた」(森田博和社長)。

 個人用1アカウントが月額4980円、アクセス分析などもできるビジネス用(3アカウントから)で同2万4000円から。

 利用者はまず、市販の360度カメラで元になる写真や動画を撮影する。カメラは数万円で、同時に撮影した複数の写真を合成した360度の画像や動画を作れる。

 この写真などをスペースリーのクラウドにアップロードし、写真上に解説のアイコンなどを埋め込むと制作は完了。VR映像を表示するURLやQRコードを作成して自社サイトやチラシに張る。ウェブ上の表示だけでなく、VRゴーグルを付けて現場にいる感覚で見てもらう方法もある。画像のどの場所がどれだけ見られたのかを調べるアクセス分析機能があり、営業内容見直しに活用できる。

 「制作会社に発注せず、営業担当が自らコンテンツを作れる環境を目指した」(森田社長)。

VRを誰でも簡単に
VRを誰でも簡単に
VRコンテンツの作成、配信から効果分析まで一貫したサービスをクラウド経由で提供する
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