この連載ではM&Aに関わるトラブルを取り上げてきました。しかし、トラブルになりそうな案件にはそもそも手を出さなければいいのに、と疑問に思ったことはありませんか? 実はここに、M&Aでトラブルが起こる理由の1つがあります。

 身売りとか乗っ取りという言葉に代表されるように、もともとM&Aにはポジティブな印象がありませんでした。そのためM&Aの交渉は外に漏れないよう秘密保持を徹底して、信用の置けるごく限られた仲介会社や専門家を通して行うのが一般的でした。また「会社を売る」という後ろめたさもあって、売り手の数は買い手の数に比べて圧倒的に少なく、多く見積もっても10分の1以下だと言われています。このあたりの事情は今でも大きくは変わっていません。

 そのような貴重な売り手の情報ですから、多くの買い手にとっては、たくさんの売り情報を比較検討するなど夢のまた夢。仲介会社から紹介される案件は通常1件ずつですから、多くの場合、限られた買収のチャンスを生かすため、多少のリスクには目をつぶるという判断をせざるを得なかったのです。

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