18リットル缶(一斗缶)製造の老舗としてオーナー経営を続けた田岡製罐。大企業と長い取引関係があるものの、原料価格上昇の転嫁ができず苦しんだ。独自商品を開発するも、育つ前にコロナ禍となり、需要急減で力尽きた。

埼玉県八潮市にある田岡製罐のオフィス。工場と併設されている
埼玉県八潮市にある田岡製罐のオフィス。工場と併設されている

 埼玉県八潮市の製缶業・田岡製罐(本店登記は東京・荒川)が6月27日に東京地方裁判所に自己破産を申し立て、即日開始決定が出された。負債額は約16億円だった。

 田岡製罐は1950年に東京・荒川で18リットル缶(一斗缶)の製造を目的に創業した事業が始まりだ。65年に法人を設立し、事実上の本社を埼玉県八潮市に設置した。18リットル缶の製造のほかに、贈答用の菓子の容器などに用いる缶の卸売りも手掛けていた。

 18リットル缶は塗料や石油製品のような工業用途から食品まで、昔から幅広く利用されているのが特徴だ。田岡製罐の取引先は食用油向けなど食品関連が多く、大手の上場企業をいくつも取引先としていた。

 90年には創業家の田岡一茂氏が社長に就任した。2008年に一茂氏の息子である現社長の田岡剛氏が社長に就いた。就任後は積極的に営業活動を展開し、売上高を毎年1億円程度伸ばしていった。12年には日産4万缶を製造し、売上高は20億円を超す規模にまで成長した。

市場は縮小の一途

 しかし、日本国内での18リットル缶の出荷量は1990年度をピークに低下傾向が続いていた。業界団体の全国18リットル缶工業組合連合会の統計によれば、90年度に業界全体で2億3442万缶あった出荷数は2021年度には1億3462万缶まで減っている。大口需要家である工場の海外移転や、ポリ容器などの代替容器の登場が主な原因とされている。

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