石見焼製品を手がけてきた島根県江津市の元重製陶所。2代にわたって、時代に合う製品開発や効率的な生産方法を開発し、新しい販路を開拓している。

元重製陶所の元重彰治社長(右)と四代目に当たる元重慎市専務(中央)は効率的な生産方法などで市場を切り開いてきた(写真提供/元重製陶所)
元重製陶所の元重彰治社長(右)と四代目に当たる元重慎市専務(中央)は効率的な生産方法などで市場を切り開いてきた(写真提供/元重製陶所)

 元重製陶所は1925年に創業。耐久性・耐水性に優れた石見焼の伝統を生かし、主に水がめを製造していた。しかし水道の普及で需要が減ったため、植木鉢の製造に転換した。70年代からは植木鉢もプラスチック製品に代替され、売り上げは約3000万円に落ち込み、借入金は約5000万円に達した。窮状を救うため、大手電機メーカーのエンジニアだった現社長の元重彰治氏は、81年に家業に戻った。

 彰治氏が陶器店に営業に行くと、すり鉢が供給不足であることが分かり、すり鉢の製造に特化する。すり鉢の製造では、職人技で内部に櫛目をつける。その職人技に加えて、彰治氏は効率的な生産ラインを開発し、高品質のすり鉢を安く大量生産することに成功した。さらにすり鉢の底にシリコンゴムをつけ、滑らないようにも工夫した。

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