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新型コロナウイルスの感染拡大で不動産市場に変化が起きている。住宅など思わぬ好況に沸くが、市場の変化はこれからが本番だ。

内外の投資マネーが狙うJT本社ビル

 「8月初めに、JT(日本たばこ産業)本社の入札があったけど、米系や中国系の投資家はまだかなり来ている」。ある大企業系の不動産投資顧問の社長がこう漏らす。JT本社とは東京の一等地、港区虎ノ門にある35階建ての高層ビル。1000億円を超えるともいわれる大型物件に外国人投資家が食指を動かしているというのだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界と日本経済を揺るがす中、世界の投資マネーが、日本の不動産市場に熱い視線を送っている。不動産市場を知り尽くす前出の社長は「むしろそんな状況だから東京にカネが入ってくる」と打ち明ける。新型コロナによる景気低迷で世界は超金融緩和に踏み込み、市場にマネーはあふれている。そこで注目を集めるのが日本市場の安定感だというのだ。

 「日本は法制度も整っている。経済は大きく成長しないが、落ち込みも限られている。質のいいビルも多いから、日本の不動産市場は安定感があると世界から見られている」。世界が不況の縁に沈みそうな時期だからこそ、“安定”した日本にマネーが向かうというのである。

 だが、一方で市場には微妙な変化も見える。上のグラフは、東京23区のオフィスビルの新規成約賃料と空室率の推移である。ここ数年、賃料はほぼ右肩上がりを続け、空室率は低下してきたが、新型コロナの感染が急増した今年4~6月期に逆流し始めたかのように映る。

 世界からマネーが流れ込む中での小さな動き。今、不動産市場に何が起きているのか。