『嫌われる勇気』の著者で、哲学者の岸見一郎氏がリーダーのあり方を説く連載の第41回。今回のキーワードは「虚栄心」と「名誉心」。岸見氏は「リーダーは虚栄心ではなく、名誉心を持たなければならない」と説く。

 三木清が虚栄心について、次のようにいっています。

「虚栄心というのは自分があるよりも以上のものであることを示そうとする人間的なパッションである」(『人生論ノート』)

 この虚栄心が、自分を実際よりもよく見せようということであればネガティブな意味になりますが、自分をより高めようと努力することであればポジティブな意味になります。

 このような虚栄心が「人間的なパッション」であるというのは、多くの人が「自分があるよりも以上のものであることを示そうとする」からですが、リーダーが前者の意味での虚栄心を持っており、他の人にどう見られるかばかりを気にかけ、優れたリーダーと思われていても、実際に優れているのでなければ、そのようなリーダーは組織にとって有害です。自分のことにしか関心がないからです。

 リーダーはこのような虚栄心ではなく、名誉心を持たなければなりません。虚栄心と名誉心はどこが違うのか。三木は次のようにいっています。

 まず、名誉心は「抽象的なものに対する情熱」を持っていることです。今すぐに評判を上げたいとか、ほめられたいと考えるのは名誉心ではなく虚栄心です。

 ソクラテスは他の市民と共に時の政権に呼び出され、レオンという無実の人を連行するように命じられました。

 しかし、ソクラテスはこの命令に従いませんでした。ソクラテスが正義のために命や危険を冒すことを厭わなかったのは「抽象的なもの」、つまり正義に対する「情熱」を持っていたからです。

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