経験豊富な税理士が見た「社長! それやめませんか?」と言いたくなる現場。ここでは、そんな現場体験の中から、4つのストーリーを紹介する。

<目次>
第1話 社長!引退宣言をしたなら、もう口を出すのはやめましょう
第2話 社長!新会社を設立するのはよく考えてからにしましょう
第3話 社長!税理士に相談せずに登記をするのはやめましょう
第4話 社長!贈与の仕方によっては、もっと節税効果が出ますよ(8月20日公開)

第3話 社長!税理士に相談せずに登記をするのはやめましょう


社長:「今度の新社屋、うちの子の会社で建てることにしました」

税理士:「お子さんが株主の休眠会社で建てるのですか?」

社長:「そうです。家賃収入で子供の会社に収益をもたらせば、相続対策にもなると思いまして」

税理士:「確認ですが、新社屋を建てる土地はこの会社の名義だったりしますか」

社長:「はい。地代をもらうと利益になるので土地は無償で貸そうと思っています」

税理士:「それはまずいですね。相続対策どころか、お互いの会社に莫大な課税が発生してしまいますよ。考え直したほうがいいですね」

社長:「!! どういうことですか?」


 不動産を新たに購入するとき、相続対策で子供名義(子供の会社名義)の資産にしようと考える社長は少なくないと思います。その際、税務に詳しい人に相談せずに「何となくうまくいくだろう」と独自判断で行動すると、後悔することになるかもしれません。

 法人税はお金の動きではなく、すべての取引を「時価(正常取引価格)」を通して課税するという考えがあるので、「何となくうまくいくだろう」と感じる取引には、大体どこかに課税の材料が潜んでいると考えてよいのです。

タダであげても課税

 法人税のことを理解しようと勉強し始めると、最初に違和感を覚えるのが法人税法22条2に規定されている「無償による資産の譲渡」が益金(課税対象となる)であるとされていることです。

 「タダであげるのに、なんでこっちが課税されるんだろう」という疑問ですが、譲渡した額に対して課税されるのではなく、「換金(売却)したら、購入額と値上がり額の差額(キャピタルゲイン)に課税される」と考え、両社の公平性を保っているのです。

 これは譲渡に限らず、賃貸でも同じことが言えます。賃料相場よりも低い金額で貸す場合も(無償含む)、相場との差額は課税の対象になります。

 税法では「時価」も重要ですが、時価について具体的には明言していません。路線価、公示価格、固定資産税評価額など、国が定めた評価額はいろいろありますが、それぞれの評価で目的が異なるため、その評価額をそのまま同族取引の時価に用いるわけにはいかないのです。

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