中小企業経営者にとって悩みが尽きない、人の問題。良い社員を採用・育成し、定着させるにはどうすればいいか。人事制度コンサルタントの松本順市氏が語る。

(写真:PIXTA)
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<シリーズ企画第3回全体の目次>
・問1 間接部門の社員は「数字」で評価できる?
・問2 人事制度はガチガチに運用せず、社長が最終調整してもいい?
・問3 流れ作業の生産ラインで働く現場社員はどう評価する?
・問4 会社の業績は悪いが、頑張った社員の賞与を増やしていい?
・問5 勤務態度の評価を客観的にする方法は?
問5
勤務態度の評価を客観的にする方法は?

 私が評価制度で使っている成長シートには、「規律性」や「責任感」といった勤務態度を評価する項目があります。経営者はこの定性評価をできるだけ客観的にしたいと考えます。

 大切なのは、勤務態度の基準を決めるときに、架空の社員ではなく、実在する優秀な社員をモデルにして特定することです。ところが、「こんな社員だったらいいな」と頭の中で思い描く理想をモデルにしてしまう経営者が多いのです。それでは、雲をつかむような話になり、客観的な評価はなかなか難しい。「わが社のこの社員のこの行動を4点とする」など、現実に即した明確な基準にしましょう。

評価項目は欲張らない

 さらに、これも多くの経営者に見られる傾向ですが、規律性を評価要素にすると「ルールを守る」「時間を厳守する」「マナーを守る」「指示命令を守る」などできるだけ幅広く対象にしようとします。

 気持ちも分かりますが、あまりに対象範囲が広いのは考え物です。「この4個の要素すべてを守っている社員は現実にいるのですか」と尋ねると、「うーん」と表情が曇ります。これではだめです。

 「ルールを守る」ことが素晴らしいと社長が考えるのであれば、まずはそれだけでもいい。あれもこれもと詰め込むと、「Aさんはルールは守っているが、時間にはルーズだよな。ルール順守と時間厳守のどちらに重きを置いて評価しようか…」などと迷ってしまいます。

 人事制度の目的は評価することではなく、社員を育てることです。「勤務態度の評価ではルール順守を重視しており、それができているのはBさん」と明確にすることで、「Bさんのようにルールを守ろう」とみんなが考えます。

 その上で経営者が「こういう場合は4点」「これくらいのルール順守なら3点」と決めて、部下を評価する上司たちに伝える。これが客観性を担保する方法です。

続きを読む 2/2 経営者が信じる基準を

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