中小企業経営者にとって悩みが尽きない、人の問題。良い社員を採用・育成し、定着させるにはどうすればいいか。人事制度コンサルタントの松本順市氏が語る。

(写真:PIXTA)
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<シリーズ企画第3回全体の目次>
・問1 間接部門の社員は「数字」で評価できる?
・問2 人事制度はガチガチに運用せず、社長が最終調整してもいい?
・問3 流れ作業の生産ラインで働く現場社員はどう評価する?
・問4 会社の業績は悪いが、頑張った社員の賞与を増やしていい?
・問5 勤務態度の評価を客観的にする方法は?
問2
人事制度はガチガチに運用せず、社長が最終調整してもいい?

 まず、大前提の話をしておきましょう。セミナーの受講者から「私の会社は社員が5人しかいないのですが、人事制度を作ったほうがいいですか」といった質問をよく受けます。

 「社長は毎日、社員と一緒に仕事をしていますか」と聞くと、「はい」と言う。このような場合、私は精緻な人事制度は必要ないだろうと考えます。社長が直接社員を指導し、毎日、目の届く場所で働く様子を見て、評価しているのであれば、昇給・賞与に対して社員から不満や疑問の声が上がることは普通はないからです。

基準は変わって当然

 社員数が増えると人事制度を整えることは不可欠ですが、経営者が差配する部分を残している会社をよく見かけます。なぜ、制度を厳格に運用しないのでしょう。

 理由の1つ目は「ガチガチに運用すると、制度が実態に合わないときに困る」と思うからです。これは大きな間違いです。人事制度は一度作れば終わりではありません。経営環境が変われば、制度も変える。社員を評価したいポイントが変われば、制度を手直しする。それが基本です。

 ある会社では、勤務態度の評価基準を「3カ月間、無断欠勤が1日以内なら評価は5点(最高評価)」と設定していました。それだけ無断欠勤が横行していたからですが、しばらくすると指導が行き届いて、無断欠勤どころか遅刻をする人も減ったそうです。そこで、評価基準を大幅に変更しました。今では、3カ月に1回遅刻しても5点にならないそうです。

年度途中の変更はNG

(写真:PIXTA)
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 これはとても分かりやすい例ですが、皆さんの会社では実態に即してこまめに制度を見直しているでしょうか。ただ、年度の途中で変えると、社員たちは混乱します。改善点が出た場合は、翌年度から変更するようにします。

 また、コロナ禍のように経営環境が一変することもあるでしょう。逆に、当初の予想以上に収益が上がる場合もあります。そうした場合にはきちんと説明します。

 「今回、プロジェクトが大成功したので、プロジェクトメンバーの賞与は3万円加算します。この先も、プロジェクトの成績によって賞与を加算するように次年度から制度に盛り込みます。ただし、加算金額はその都度決めます」

 制度化したほうが何をどう頑張ればいいのかが分かるので、社員の意欲は一層高まります。

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