既存事業に行き詰まりを感じているなら、M&A(合併・買収)を選択肢に入れてはどうか。事業も経営者自身も活性化するはずだ。M&Aを軸に、10年で3倍以上に成長する前田工繊を紹介しよう。

(写真:的野弘路)
(写真:的野弘路)

<目次>
前田工繊が異業種M&Aを次々と成功させられる理由
前田尚宏社長「経験のない事業に接するとワクワクする」(8月11日公開)

 前田工繊という会社をご存じだろうか。福井県発祥で、創業100年を超えている老舗オーナー系企業だ。祖業は土木・建設の現場で使われる繊維系製品の製造。現在は、山の斜面の崩落を防ぐためのシートや、河川を護岸するための資材、道路の補強・補修をするための資材などを製造する。

10年間で売上高3倍以上

 売上高は2020年9月期で393億円。21年9月期は430億円を見込む。10年9月期の売上高は126億円なので、この10年間で3倍以上に成長した。営業利益率も10年9月期以降は2期を除き10%以上を達成している。高成長率と高収益率を両立する東証一部上場企業だ。

高い成長率と利益率を両立している
前田工繊の業績推移
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 1つの製品が大ヒットして急成長したわけではない。複数の事業を少しずつ伸ばしてこの成長を実現している。その柱となるのが、積極的なM&Aだ。

 20年9月期の393億円の内訳は、土木・建設資材と農業資材、不織布や魚粉製造を合わせて263億円、子会社で自動車用の鍛造アルミホイール製造のBBSジャパンが110億円、クリーンルーム向けのワイピングクロス(化学繊維性の拭き取り用の布地)などを製造する未来コーセンが20億円となっている。

 M&Aはこれまでに10件以上。さらに、17年にはベンチャーキャピタルをつくり、先端技術を研究するベンチャー企業への出資も開始。19年には、血管の病気を治療する機器を開発するスイスのメーカーに出資して医療機器に進出するなど、多様化を進めている。

 02年に入社し、18年に社長兼COO(最高執行責任者)に就任した前田尚宏氏は、「M&Aはワクワクする」と表現する。それは、既存事業の延長線上にはない市場や人材の発見があるからだ。

 前田工繊は、M&Aをした会社に対して、特別な改革をするわけではない。前田社長が最前線で超人的な活躍をするわけでもない。経営や現場管理のキホンを注入するだけだ。それで十分に成長するのだと前田社長は語る。

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