伸びている会社は「六方よし」の経営を実践している──。六方よしとは、近江商人の「三方よし」に「作り手よし」「地球よし」「未来よし」を加えた経営理念だ。この説を主張しているのは、経営エッセイストの藻谷ゆかり氏。藻谷氏は最新刊『六方よし経営』でこれを世に問うている。六方よし経営とは何か、そしてその担い手とはどのような人たちなのか、同氏がリポートする。

・今、なぜ「六方よし経営」なのか?
・「六方よし経営」へのプロセスは越境学習から始まる
・「六方よし経営」の担い手は若い世代(8月16日公開)
藻谷ゆかり(もたに・ゆかり)氏
経営エッセイスト。1963年横浜市生まれ。東京大学経済学部卒業後、旧日興証券に就職。ハーバード・ビジネススクールでMBA取得後、旧日本モトローラ、旧日本GM勤務を経て、97年インド紅茶の輸入・ネット通販会社を千葉県で起業。2002年に家族5人で長野県に移住。18年に会社を事業譲渡し、現在は「地方移住×起業×事業承継」についての執筆と講演を行う巴創業塾を主宰。7月、日経BPから『六方よし経営』を出版

 私は、日本に既にある六方よし経営の事例を研究してきましたが、そうした事例研究を通じて、六方よしに至る、典型的なプロセスを見つけることができました。

 六方よし経営の第一段階として見られるのは、自分が知らない世界で新しい経験をする「越境学習」です。越境学習は、今いる場所を越えたところで学ぶことなので、そう名づけました。

六方よし経営は「越境学習」から始まる
六方よし経営は「越境学習」から始まる
藻谷氏は、既に六方よし経営を実践している事業の研究から、どのようなプロセスを経てそれが実現しているのか明らかにした。越境学習により備わった新しい視点で、「今ある資源や足元にある価値」を再発見し、それをフェアトレードや「地産地承」の事業につなげることで六方よしがそろうという
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 改めて後述しますが、簡単に言えば、越境学習は、普段の仕事や生活とは全く異なる経験をしたり、未知の人々と交わったりすることによる学びです。

 そして越境学習後には、そこで得た知見だけでなく、「新しい視点」を手に入れられます。そうして自分たちの既存の事業や、特に地場産業や伝統工芸といった、これまでずっと身近にあった地域資源に対して、改めて「価値の発見」ができるようになります。

 価値の発見の後には、「フェアトレード」と「地産地承」という2つの行動が伴うケースが多くあります。プロセス全体は上の図のようになります。

続きを読む 2/5 越境した所で学習する

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