「窮地を支えてくれたのはリピーターだった」。新規顧客の獲得はもちろん大事だが、今、支えてくれている顧客の存在も忘れてはならない。コロナ禍でより一層、その大切さが表面化したリピーター。世の中には、リピーターの心をつかんで離さない企業がある。そんな企業は一体、何が違うのか。何をしているのか。本特集ではリピーターに支えられる企業の取り組みを基にその秘訣を探った。

(写真/PIXTA)
(写真/PIXTA)

・ノルマなし、売り上げ目標なしの「売らなくていい」環境で成長
・中華ファミレス、常連客の心をつかむ「名前で呼ぶ」接客
・「個の力」を引き出し、 泊まるたびに感動がある旅館に
・ブランドの責任、何より大切にするのは「顧客との約束」を守ること

case3
旅館
 食べるお宿 浜の湯(静岡県東伊豆町)
「個の力」を引き出し、泊まるたびに感動を

リピーターに飽きられてしまう課題を 「人の手」に託した
リピーターに飽きられてしまう課題を 「人の手」に託した
食べるお宿 浜の湯 社長
鈴木良成(すずき・よしなり)氏
1964年生まれ。釣り宿「浜の湯」の長男として生まれ、大学卒業後2年間、山形県の旅館で修業を積み家業に加わる。2008年、社長就任

 「どこのホテルや旅館も、初めて来たお客様に多少なりとも気にいっていただけたら、2回目の来館はあるでしょう。けれども、2回目と3回目には大きなハードルがあり、そこを乗り越えたとしても3回目で飽きられてしまうことが少なくありません。今はネットで簡単に宿情報が手に入る、お客様がすぐに目移りしてしまう時代です。1度離れたお客様は戻ってこないことが多い。では、どうするか。旅館の商品とも言える、施設、料理、サービスの3つを、いかにリピーターを手放さないようなつくりにするかが重要です」

 こう話すのは、宿泊客の半数近くがリピーターという伊豆稲取温泉にある旅館「食べるお宿 浜の湯」の鈴木良成社長。

 全国には約5万軒の宿泊施設があり、県別で静岡県は東京、北海道に次ぎ、数が多い激戦区だ(厚生労働省「衛生行政報告」2021年3月時点)。そんな中でも浜の湯はリピーターの支えもあり、売上高12億3000万円、経常利益2億5000万円(21年11月期)と業績は右肩上がり。鈴木社長が語る、施設、料理、サービスの3つにおける工夫を見ていく。