「窮地を支えてくれたのはリピーターだった」。新規顧客の獲得はもちろん大事だが、今、支えてくれている顧客の存在も忘れてはならない。コロナ禍でより一層、その大切さが表面化したリピーター。世の中には、リピーターの心をつかんで離さない企業がある。そんな企業は一体、何が違うのか。何をしているのか。本特集ではリピーターに支えられる企業の取り組みを基にその秘訣を探った。

(写真/PIXTA)
(写真/PIXTA)

・ノルマなし、売り上げ目標なしの「売らなくていい」環境で成長
・中華ファミレス、常連客の心をつかむ「名前で呼ぶ」接客(8月9日公開)
・「個の力」を引き出し、 泊まるたびに感動がある旅館に(8月10日公開)
・何より大切にするのは「顧客との約束」を守ること(8月10日公開)

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料理道具店
 飯田屋(東京・台東)
お客様を大切にするために「売らなくていい」環境をつくる

 「数字」に追われないようノルマや売り上げ目標をなくした
「数字」に追われないようノルマや売り上げ目標をなくした
飯田屋 6代目店主
飯田結太(いいだ・ゆうた)氏
1984年生まれ。明治大学卒業。TBS「マツコの知らない世界」やNHK「あさイチ」、日本テレビ「ヒルナンデス」など、多数の情報番組で道具のマニアックな魅力を伝える料理道具の伝道師として活動中

 「求めていた道具に出合える」「知らない道具の便利な使い方が知れる」──。店に訪れた人の評価はさまざまだが、総じて「また来たい」と思わせる魅力を持っているのが、料理道具専門店の飯田屋(東京・台東)だ。

 飲食関連の道具を扱う専門店が数多く集まる「かっぱ橋道具街」の中でも、最寄りの駅からは徒歩10分と遠く、立地は不利。だが、毎週、毎月、飯田屋に来るためだけにかっぱ橋を訪れる人が後を絶えない。なぜ、飯田屋を選ぶリピーターが多いのか。それは同社の型破りとも言える経営哲学や仕組みづくりにヒントがあった。

 6代目店主の飯田結太氏は語る。「僕はもともと『日本で一番売り上げが高い店』を目指していました。ですが、今は違います。『日本で一番相談したくなる店』を目指しています。目の前のお客様の困りごとに、僕たちは何時間でも、とことん付き合う。商品も売ろうとはしない。お客様がお持ちの道具で事足りるなら使い方をアドバイスすればいいし、お客様が求める商品が別の店にあるなら、その店を勧める。お客様は相談しに来るだけでいいし、何なら雑談しに来るだけでもいい。『お客様の満足』だけを考えて接客することを徹底しています」。

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