いまだに「お客様は神様」なのか──。顧客からの理不尽な要求や悪質なクレーム、嫌がらせや暴力を指すカスタマーハラスメント(カスハラ)がこの2、3年で注目されるようになった。社会的なストレスの増大、最近はコロナ禍によるさまざまな制約もカスハラの増加に拍車をかけている。従業員の安全配慮義務上からも、経営者はカスハラへの対策を迫られる。さらに問われているのは「我が社の顧客とは誰なのか」だ。

・中小企業にもカスハラ対策が迫られる
・「グレーなクレーム」を顧客対応の現場でどう見極めるか
・顧客との関係性を明言し、カスハラへの抑止力をつくる(8月5日公開)
悪質なクレームは以前からありました。昨今問題になるカスハラは以前と何が変わってきているのですか。
かつての金品を目的とした悪質クレーマー、反社会的組織や半グレと言われる人たちが大半だった頃とは様変わりしました。
ごく一般の人、サラリーマンや主婦、立派な経歴を持つ企業の元重役の方などが、信じられないような金銭要求をしたり土下座を強要したりする。あおり運転などもそうした傾向の一端ではないかと思いますが、社会的な不自由さや制約の中で不満が充満し、はけ口があると一気に暴発するのです。コロナ禍でさらにそれが強まっていると思います。
グレーゾーンが拡大

一般の人であれば、途中まではお客様だと思って接しているので、現場の対応はより難しくなっているのですね。
悪質なプロのクレーマーであれば、要求にはある程度パターンがあります。「誠意を見せろ」と言われれば金銭を要求しているなと分かります。ところが一般のクレーマーはそうした予測がつかないことが多い。
多くは自分の考えている正論を振りかざしてきますが、どんなに正論を言われても、その方の思う通りに企業側が対応できないことは多々あります。
例えば食品に小さい異物が混入していたと言ってくる。それ自体は対応すべきことですが、「私が気づかなかったら大変なことになっていた」「原因を徹底的に究明しろ」と言い、「そんな対応じゃ納得できない」と食い下がり、要求がエスカレートする。「納得できない」と言う人を納得させる作業は、ほぼ不可能に近いです。
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