日経BPは、このほど『稲盛和夫、かく語りき』を発行した。1970年代以降、「日経ビジネス」「日経トップリーダー」で掲載した稲盛和夫氏のインタビュー記事などを時系列で編集した書籍だ。その一部をダイジェストする。

文/北方雅人

 稲盛和夫氏が名経営者であることに異論を挟む人はもはやいないが、最初から名経営者と称されたわけではない。いや、稲盛氏本人は1970年代のインタビューを読んでも、驚くほど今と変わっていない。我々メディアのほうが稲盛氏をどう位置づければいいかを戸惑っていた節がある。本書で掲載しているインタビュー記事はその大半が両誌の歴代編集長が聞き手だが、その質問を追うと稲盛氏と時代の関係がよく分かる。

 「稲盛経営」は二本柱で構成する。1つがアメーバ経営。組織を小集団に分けて採算管理する手法だ。こちらはまだしも、もう1つの柱がなかなか理解されにくかった。人間精神を軸に据えるフィロソフィ経営である。「宗教的」と言う声もかつては少なくなかった。稲盛経営が真に評価されるのは2000年代に入ってからだろう。日本企業の失速と逆行するように、人間精神に立脚する経営に注目が集まるようになった。

 日本は今、再び大きな転換点を迎えている。経済も社会もコロナ禍前とはまるで違う景色が広がっている。加えて、本格的な人口減少時代に突入した。これまでの常識は通用しない。私たちが求めているのは小手先の処方箋ではなく、人としてどう生きていけばいいのか、これから社会をどう構築するかという根源的なものだ。稲盛氏の半世紀の言葉を時系列で読み進めると、この先、私たちに必要なものが見えてくる気がする。

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