(写真/PIXTA)
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 慎重堅実な経営によって会社を安定させるだけにとどまらず、異分野への進出も含め、「新しいことに挑戦する」「常に創造的な仕事をする」というフィロソフィも経営者には求められます。

 企業の安定は、往々にしてチャレンジ精神を喪失させてしまう原因になりかねません。しかし、現状に甘んずるということは、すでに退歩が始まっていることを意味します。

 経営者が変化を恐れ、挑戦するマインドを失ってしまっては、その集団はやがて衰退の道を歩み始めることになります。つまり、経営者が現状に満足することなく、常に変革と創造を行うことができるかどうかが、集団の運命を左右すると言って過言ではありません。そして、その変革と創造の中心に位置するのが、経営者本人なのです。

 このことは、すでに成長した大企業だけの問題ではありません。今ここにおられる皆さんの企業においても、皆さん自身が、旧来のやり方にとらわれたり、新しいことに挑戦する気概を失ったりしていないか、今一度反省し、確認していただきたいと思います。

 例えば、かつて成功したビジネスモデルに固執し、新しい事業展開をすることに二の足を踏んでいないか。創業当初は経営者のトップダウンで迅速に行われていた意思決定が、リスクを恐れるあまり決断が遅くなり、大きなビジネスチャンスを逃すようなことになっていないか。

 もし、皆さんの会社においてそのような傾向が少しでもあるとすれば、すぐに是正していかなければなりません。経営者自身が易きに流れようとする心を打破し、いかに困難であろうと、常に創造的なことに挑戦していくような組織風土をつくることが必要です。

 ぜひ、変革を恐れず、理想を描き、その実現のために自ら先頭に立って挑戦する、そのような経営者をめざしていただきたいと思います。

自分の能力を未来進行形でとらえる

 また、そのように新しいことにチャレンジし、それを実現していくためには、「人間の無限の可能性を信じる」というフィロソフィが必要です。自分の持つ能力を、現時点で判断するのではなく、今から磨きあげることによって、それは限りなく進歩するものであると信じるのです。つまり、努力し、一生懸命チャレンジすることによって、人間の可能性は無限に発展していくのだということを信じるべきです。

 現在の自分の能力をもって、「できる」「できない」を判断していては、新しいことは何もできません。たとえ今はとてもできないと思われるような高い目標であっても、未来のある一点で達成する、と決めてしまい、それを実現するために、現在の自分の能力を高める努力を日々続けていく。つまり、「能力を未来進行形でとらえる」ことが大切です。

 そのように未来進行形で自分の能力をとらえて、今から努力していけば、自分の能力は未来にはもっと高いものになっていくのだということを信じるべきです。

 これは、まさに、京セラが創業以来大切にしてきた精神です。創業間もない頃の京セラが生産していた製品は、「U字ケルシマ」という、テレビのブラウン管に使われていた絶縁部品、ただ一点のみでした。この単品生産のままでは経営は不安定であるため、新製品開発や事業の多角化が求められました。ただ、当時の京セラに、そのために必要な技術の蓄積があったわけではありません。市場をかけずりまわり、お客様のニーズをお聞きしながら、ひたすら受注に努めていき、それを開発していくしかありませんでした。

 しかしながら、生まれたばかりの小さな会社に注文を出してくれるようなお客様は、なかなかありません。引き合いをいただけるのは、どこの会社に頼んでも、「できない」と断られたような、技術的に難しいもの、あるいは採算が合わないようなものばかりでした。

(写真/アフロ)
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