大胆さと細心さを併せ持つ

 もちろん、経営者は小心者であるべきだからと言って、常にそういう態度でありさえすればいいというものではありません。重要な経営判断を迫られたときに、小心さや臆病さだけが前面に出ては、会社の命運を握る経営者としての役割を果たすことはできず、ダイナミックな経営のかじ取りもできません。当然ながら、時には大胆に決断もしなければなりません。

 そういう意味では、「大胆さと細心さを併せ持つ」というフィロソフィが求められるのだと思います。つまり、大胆さと細心さ、あるいは小心さという矛盾する2つの考え方を同時に持っていなければなりません。

 常に大胆であってもいけませんし、いつも細心で、小心であってもいけません。また、その真ん中であればいいというものでもありません。「大胆さ」と「細心さ」あるいはビビりの心の2つのものを綾(あや)織りのように織りなしていく。その両極端を兼ね備えていなければならないのです。それら2つは矛盾しています。しかし、その矛盾を矛盾とさせないことが大切なのです。私自身も、そうした相矛盾するものを持っています。ですから若い頃には、「この前あれほど大胆だった自分と今こうしてビビっている自分と、どっちが本当の自分なのだろう」と悩んだこともありました。そのようなときに、米国の作家、フィッツジェラルドの次のような言葉に出合いました。

 「第一級の知性とは、両極端の考え方を同時に併せ持ち、かつ、それを正常に機能させることのできる人間である」

 ここに述べられているように、大胆であるべきところでは大胆であり、細心でなければならないときには細心であるべきなのです。そのように両極端を併せ持ち、正常に機能させることでこそ、経営者は事業を安定した成長発展へと導くことができるのです。

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(この記事は、「日経トップリーダー」2022年7月号の記事を基に構成しました)

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