
本日は、「なぜ経営に哲学が必要か」というテーマで、盛和塾で学ぶ上で最もベースとなることについてお話ししたいと思います。
経営者の哲学と会社の業績はパラレルの関係
私はこの盛和塾では、「経営者には立派な哲学が求められる」「経営者の哲学と会社の業績はパラレルの関係であり、経営を伸ばそうと思うならば、まずは経営者自身の心、精神性を高めなければならない」、つまり、「心を高める、経営を伸ばす」ということを説き、盛和塾のモットーとしています。
ここで言う「哲学」とは、その人が持つ考え方、あるいは人生観と言い換えてもいいかもしれません。経営者は誰でも、「人生はこうあるべきだ」とか、「自分の会社をこうしたい」という考え方なり人生観というものを持っているはずです。
では、なぜ経営者の考え方が大切なのでしょうか。それは、経営者の持っている考え方によって、経営のすべてが決まってしまうからです。もし皆さんの会社の経営がうまくいっていないとすれば、それは幹部が悪いのでもなければ、従業員が悪いのでもありません。大変失礼なことを言うようですが、それはただ1つ、トップである皆さんの考え方が間違っているからに他なりません。
そのことで思い出すことがあります。京セラは中小零細企業からスタートして急速な発展を遂げていったわけですが、成長を続ける京セラに対して、昔、ある経営者から次のように言われたことがありました。
「稲盛さん、あなたは会社が大きくなったのに、今でも休む間もなく朝から晩まで働いている。京セラが立派な会社になって、相当余裕もできたのだから、もうそんなに一生懸命働く必要はないのではないか」
その方は、事業を通じて、ある程度の個人資産をすでに持ち、会社も毎年数億円の利益を出していたことから、「もう使い切れないほどのお金がある。もうこれで十分ではないか。何でそんなにあくせく働かなければならないのか」と思っておられたようです。そういう考え方を持っていたために、その方の会社は小さな会社でそこそこの利益を出すだけで、それ以上伸びていませんでした。
ところが、その方は「いや、私も会社を伸ばしたい」とおっしゃいます。私に言わせれば、その方自身の考え方が会社を伸びないようにしているのですが、そのことに気づいていないのです。一方で「伸びなくてもいいとは思っていない」と言いながら、他方で「そんなに働かなくてもいいではないか。もっと楽をしたい、怠けたい」と思っている。そうした深層心理、考え方が、実は会社の業績を左右することになります。
「たった1回しかない人生なのだから、自分がどれくらいできるのかを試してみよう、一生懸命努力して、素晴らしい人生にしよう」と考える人もいれば、「たった1回しかない人生なのだから、そんなにあくせく働いて過ごすのはもったいない、もっと面白おかしく人生を楽しもうではないか」と考える人もいるはずです。つまり、考え方は経営者が100人いれば100人、それぞれ違います。
その考え方が、会社の成否を決めています。経営者が思っていること、考えていることがすべて、自分の会社の業績に反映されるわけです。ところが、誰もそうだとは思っていません。「自分が何を考えているかで自分の会社が左右されるはずはない」と考えている方がほとんどです。

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