

著者 : セネカ
訳者 : 中澤 務
出版社 : 光文社
価格 : 990円(10%税込み)
今回は、ルキウス・アンナエウス・セネカの『人生の短さについて 他2篇』を紹介します。セネカは、紀元前1年頃から紀元後65年を生きたローマ帝政時代初期の政治家・哲学者であり、皇帝ネロの家庭教師として広く知られています。
2000年前に書かれた文章ですが、現代を生きる私たちにとっても身近に感じられるテーマで、難しく捉えずただ処世訓として読むだけでも、学びが多い1冊です。それぞれの書簡から、人生の本質的な価値を重んじ、小事に気を取られず、揺るがぬ意志に従い生きることを勧める本書からは、哲人・セネカの思想の幹の太さを感じます。
当時のローマは、政治情勢の不安定な時代とされています。この時期の皇帝として有名なカリグラとネロに暴君としてのイメージが定着していることも、その印象を強くする一因でしょう。
そんな波乱の時期にセネカは政治の世界に入ります。一度は政争に敗れ追放を経験しますが数年後に復帰。その後はネロの幼少期の師となり、政務の最高責任者である執政官としてネロの初期の治世を助けました。そして最終的にはネロとの確執から自殺を命じられます。
このように、セネカのキャリアは政治家としての色が濃いものです。しかしもともとは哲学を志向しており、政治の道を選んだのは父の期待に応えた結果でした。本書にはセネカが著した3つの手紙が収められていますが、そこには哲学者として世俗と離れた哲学的価値を求めていたセネカの姿を見ることができます。この哲学者として持っていた一貫した価値観は、政治の世界で生き抜く際にもセネカを支えていたのだと思います。
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