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生産性の高い社員が、生産性の低い社員に、仕事のやり方を教える会社。この風土ができておらず、働き方改革が遅々として進まない事例は山ほどある。教え合う会社になれるかどうかは、評価制度の作り方で決まる。

松本順市(まつもと・じゅんいち)
ENTOENTO代表
1956年生まれ。中央大学卒業後、鮮魚店に入社し、社長の参謀役を務める。業界初の働き方改革に取り組み、サービス残業ゼロを実現。社員が成長する人事制度を構築し、東証2部上場の原動力となる(現在東証1部)。その後独立し、人事コンサルタントとして1266社の中小企業を指導する

 あなたの会社にいる優秀な社員は、同僚に仕事のやり方を細かく教えているでしょうか。表面的なことは教えても、核心部分のノウハウは話さない。そんな人は結構います。「なぜ、同僚に仕事を教えないの?」と尋ねると、およそ次のような結果になります。

 50%の人たちは、自分が成果を出せている理由をきちんと自己分析できていません。感覚的に仕事をしているため、人に教えたくても教えられないのです。これはこれで問題ですが、残りの50%の人のほうが深刻です。

 その人たちは、どのような仕事のやり方をしているから生産性が上がっているのかを理解しています。けれど、そのやり方を教えると仲間が成長し、自分との差が縮まる。昇給・賞与に影響が出かねないと危惧し、教えないのです。

教えた人に最高の評価を

 働き方改革を進めるには、生産性向上が欠かせません。そして組織の生産性を引き上げるには、生産性の高い社員がその仕事のやり方を、生産性が低い社員に教える必要があります。しかし、困ったことに、従来の評価・賃金制度は仲間に仕事を教えることを促すどころか、阻害するのです。

 特に歩合給を導入している会社では、教えない傾向が顕著に表れます。成果を上げるほど歩合給が増えるならば、同僚の成長を抑えてでも自分の成果を上げようと考える人が出てくるのは、自然です。歩合給までいかなくても、多くの評価制度は実質的な成果主義ですから、状況は同じです。

 それでも、「成果=売り上げ」の時代なら何とかなりました。売り上げを稼ぐ人にもいろいろなタイプがいますが、その1つが長時間労働型。残業をしたり休みを削ったりして、成果を出すタイプです。彼らのやり方は、わざわざ教えられなくてもまねしやすい。

 けれど今求められるのは、短い時間で高い成果を上げる生産性の高い社員です。しかし、生産性の高い社員の場合、がむしゃらに働いているわけではないので、どんな仕事の仕方をしているか、周囲からはなかなか分かりにくい。前回触れたように在宅勤務の働き方をうまく活用して生産性を上げている場合は、なおさらです。

 だから生産性の高い社員がノウハウを独り占めせず、みんなに教えたくなるような仕組みを整えなければいけません。そのために評価制度の変更は必須なのです。では、具体的にどうすればいいのでしょうか。簡単です。