「うちは課長には困っていないが、部長にしたい人材がいないんだよ」――。
中小企業の経営者と人事の雑談をしていると、よくこのような悩みが出てくる。部長職を任せられる人材が不足しているというのだ。
「評価が高かった課長が部長になった途端、力を出せなくなり、部下からの評判も悪くなった」というケースも耳にする。
これらは幹部候補が育っていないということであり、経営リスクでもある。
なぜこうしたことが起きているのか、課長と部長にどのような違いがあるのか。本特集はさまざまな視点から「部長不足」の問題を考えていく。

<特集全体の目次>
経営者の悩みと現状:「部長の限界」が「会社の限界」に
部長の役割と能力:部長は「管理者」ではなく「経営者」の視座を持つ
部長育成:動くのはまず社長から!「頼れる部長」の育て方
ここからは社員に対する、もう少し具体的なアクションについて見ていく。「頼れる部長」の育て方を参考にしてほしい。
まず、多くの経営者が疑問に思っている「うちの部長はなぜ、私が期待していることをしてくれないのか」について考えたい。
あなたの会社の部長は、能力がないわけでも、仕事をさぼっているわけでもなく、業務負荷が高過ぎて期待している仕事がこなせていない可能性がある。
「まともに部長職を務められない“きつい”環境」に置かれていることに気づいた場合は、部員にヒアリングした上で、「部長の業務量を減らす」「業務フローを改善する」「部署に人を増やす」といった環境改善に力を注いでほしい。
「部長の負荷をとにかく減らす」ことを最優先し、部長本来の業務に当たってもらおう。
原因は経営者にある!

負荷が原因でない場合は、部長は一生懸命働いているが、どうも期待通りにいっていないことになる。そんなときは、「経営者が部長に期待していること」と、「部長が会社のために努力していること」の間に大きなズレがある可能性がある(上図)。この「ズレ」の原因は主に経営者にある。
「これまで延べ1万2000人以上の中小企業経営者の相談を受けてきて、『幹部候補が育たない』という悩みは本当によく聞いた。ただ、そのほとんどが、経営者が悪い。人材教育を人任せにしていて、自分は何一つ汗をかいていないことが多かった。経験上、人を育てるのが上手な企業の経営者は、経営者自身が自分の時間の3割を人材教育に充てている」
中小企業を中心に経営コンサルティングを手がける白潟総合研究所の白潟敏朗社長は、自覚がない経営者にこう警鐘を鳴らす。
白潟氏は続ける。
「経営をサポートしてくれる頼れる人材を欲しがっているのに、自分では育てる気がない。その意識を変えることが大前提。経営者が幹部育成の前に確認したい8つの質問がある。それらをすべて『はい』と言えたところからスタートしたい」
経営者に向けた8つの質問が下のリストだ。
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