「うちは課長には困っていないが、部長にしたい人材がいないんだよ」――。
 中小企業の経営者と人事の雑談をしていると、よくこのような悩みが出てくる。部長職を任せられる人材が不足しているというのだ。
「評価が高かった課長が部長になった途端、力を出せなくなり、部下からの評判も悪くなった」というケースも耳にする。
 これらは幹部候補が育っていないということであり、経営リスクでもある。
 なぜこうしたことが起きているのか、課長と部長にどのような違いがあるのか。本特集はさまざまな視点から「部長不足」の問題を考えていく。

(イラスト:PIXTA)

<特集全体の目次>
経営者の悩みと現状:「部長の限界」が「会社の限界」に
部長の役割と能力:部長は「管理者」ではなく「経営者」の視座を持つ
部長育成:動くのはまず社長から!「頼れる部長」の育て方(7月14日公開)

 「部長は部門を『管理する人』と思われがちだが、正しくは部門を『経営する人』。会社の発展のため、将来にわたって改革を続ける人でもある」

世の中は「部門管理者」の部長ばかり

 こう語るのは日本能率協会マネジメントセンターの組織・人材開発事業本部チーフHRMコンサルタントの田崎洋氏だ。

目的まで理解しているか

 「管理者ではなく経営者」──。ここが課長と部長の大きな差だろう。部長は部を経営するという意味で、ほぼ経営者と同じ視座が求められる。その上で、掲げた目標の背景にある「目的」まで理解し、自分の解釈も交えつつ、下に分かりやすく伝える力が必要になる。

 ここで注意したいのは、部長が社長や役員の考え、指示を単に下に伝えるだけの伝書バトになっていないかどうかだ。

 部長に限った話ではないが、誰しも失敗はしたくないもの。そうした失敗を怖がる心理が保身に走らせ、経営に必要な挑戦心を阻害する。

 部長以上の役職で重要になる要素の1つに「戦略的意思決定」がある。これは組織における意思決定を3つに定義した米国の経営学者アンゾフの「意思決定モデル」に出てくるものだ。

 同モデルでは、組織の意思決定を階層別に上から「戦略的意思決定」「管理的意思決定」「遂行的意思決定」の3つに分類しており、戦略的意思決定が必要なのは、トップマネジメント層(部長以上の層)としている(下図)。

環境変化が激しい時代でマネジメントも変わった
出所:日本能率協会マネジメントセンター

 この戦略的意思決定は、必ずしも成功は保証されない挑戦的な判断だったりする。既存事業を大きく変える決断も同じだ。

 この戦略的意思決定ができない部長は、課長や係長と同じく、「やったことがある/ない」「管理できる/できない」「成功を証明できる/できない」などを判断基準にする管理的意思決定をする。

「失敗しない人」は要注意

 これらはしばし「守り」の決断になりがちで、その理由は前述した「失敗するのではないか」という心理が影響してくる。

 「部長に昇進してからうまくいかなくなる社員は失敗の経験が少なく、順調に出世街道を歩んできた人に多い。失敗に慣れておらず、うまく失敗して学ぶ(小さな失敗で済ませる)ことにもたけていない。そんな人は、マイナス点をつけないように課長時代までと同じ、失敗しにくいマネジメントをする」(田崎氏)。

 これでは改革や挑戦が必要な部長としての役割を果たせない。

 あまり失敗しない人は、失敗を恐れる人でもあり、失敗に慣れていない人でもある。そんな人は、部長以上の職では、失敗を恐れない意識への転換が求められる。

続きを読む 2/3 部長に必要な4つの姿勢

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