「うちは課長には困っていないが、部長にしたい人材がいないんだよ」――。
 中小企業の経営者と人事の雑談をしていると、よくこのような悩みが出てくる。部長職を任せられる人材が不足しているというのだ。
「評価が高かった課長が部長になった途端、力を出せなくなり、部下からの評判も悪くなった」というケースも耳にする。
 これらは幹部候補が育っていないということであり、経営リスクでもある。
 なぜこうしたことが起きているのか、課長と部長にどのような違いがあるのか。本特集はさまざまな視点から「部長不足」の問題を考えていく。

(イラスト:PIXTA)
(イラスト:PIXTA)

<特集全体の目次>
経営者の悩みと現状:「部長の限界」が「会社の限界」に
部長の役割と能力:部長は「管理者」ではなく「経営者」の視座を持つ(7月13日公開)
部長育成:動くのはまず社長から!「頼れる部長」の育て方(7月14日公開)

 「部長を任せられる人材が社内にいない」と思っている経営者は意外に多い。今の部長に物足りなさを感じている経営者もいる。

 課長までは成績優秀者が順当に育っていくが、それは部長となると話が違う。「昇進において部長は、課長までの道のりの延長線上にはない」からだ。

 課長と部長では役割やマインドセットが全く異なる。このため、そこには「大きな壁」が存在する(下図)。

課長と部長の間にある大きな壁
<span class="fontSizeL">課長と部長の間にある大きな壁</span>

 それだけに「そろそろ彼も課長が長いから部長に」「営業3課の売り上げがいいから、あそこの課長を部長に」などという理由で昇進させると後で悔やむことになるかもしれない。

 インターネットでギフト商品を販売するA社のB社長は、「部長の限界が会社の限界」と断言する。

 これは部長に昇進させた社員で苦労した経験から出た言葉だ。

部長がボトルネックに

 「その部長は大学卒業後からうちで働いている40代のベテラン。誰よりも知識や経験が豊富で、売れる商品の予測も精度が高い。ただ、社長の私が何を言っても、現場で彼が『無理』と言えば、周りの人間はそれ以上何もできない状態になっていた。それもあって、新しいことになかなか挑戦できずにいた」(B社長)。

 B社長はその頃、業績が伸び悩んでいることを気にしていた。「それは自分の責任」とB社長は語っていたが、その部長の行動が業績低迷の1つの原因であることは明らかに見えた。

<span class="fontBold">部長になってから胃が痛い……</span>(写真:PIXTA)
部長になってから胃が痛い……(写真:PIXTA)

 「彼は仕事はできるが、人に仕事を任せられないタイプ。1人でたくさんの仕事を抱え込んでいた。その負荷の度合いで、『やる、やらない』を判断する傾向があった。『失敗してもいいからもっと部下に仕事を振ってほしい』と再三再四頼んでも、仕事ぶりは変わらない。彼には私と同じ経営者目線で会社の将来や社員のことを考えてほしいのに……」

 彼の肩書は部長だが、課長の仕事、さらにはその下がやるべき仕事までやっていたのだ。

 その後、B社長は半ば強引に部長の業務内容を変えた。その上で、自分の思いや部長に期待する内容を伝え、時間をかけて自分と目線を合わせていったという。

続きを読む 2/3 部長の4割がプレーヤー

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