ITの専門家は社内にいなくてもDXで成果を上げる中小企業はある。どのように進めているのか。変革を担う人はどのように育つのか。2社の事例にヒントを探った。
クラスコ/学び、称賛される場をつくる

設立 : 1963年
事業内容 : 不動産の売買、賃貸借、仲介、修理、管理、コンサルティング、業務改善サービスの開発・提供など
売上高: 約55億円(21年6月期、グループ全体)
従業員数: 197人
コーポレートカラーのオレンジが印象的な金沢市の不動産会社クラスコ。1963年に創業し、2013年に社名をタカラ不動産からクラスコに変更した。
直近の8年間で売り上げは約2倍、利益は4倍に成長している。その成長を支えるのがブランディングやデザインへの注力、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上だ。
3代目の小村典弘社長は99年、同社に入社した。当時、不動産業務のほとんどが書類と手作業のアナログの世界。個々の業務を効率化できるようなツールもなく、生産性の低さを実感していた。
その上、不動産の賃貸や購入の顧客となる人口は確実に減少していく。「当時は純資産も少なく、財務面で将来に不安があった。人口が減る中で永続できる会社にするには、できる限り生産性を上げて成長し、利益を出せる体質にしなければいけないと考えた」。
3年で8割の社員が退社
社内業務の改革に取り組み始めたが、これまで仕事のやり方を任されていたベテランからは反発を受けた。気づけば業界平均の倍を上回る33%という離職率が3年間続いて、8割もの社員が辞めていった。
積極的に若手を中途採用したが、不動産業界は未経験の人、経験の少ない人が多い。そこから個人のスキルに依存しない仕事の仕組みづくりを本格化した。
「スーパー営業マンがいたとしても辞めたらそれでおしまい。誰でも仕事ができて、売り上げを伸ばせる仕組みを目指した」
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