温暖化ガス排出量を2030年に13年比で46%減、50年にはゼロにするという脱炭素の動きは、産業と市場を激変させる。一部の中小企業は既に脱炭素ビジネスを展開し、事業構造を変え、成長の足がかりをつかもうとしている。経営の基本は変化に敏感になり、素早く動ける企業になること。先行する経営者たちは何を見て、どう動いているのか。その姿を追った。

 風力発電 
建設ラッシュの急成長市場に

 国内有数の大河川、最上川の川縁に高さ約120mの巨大風車が立つ(上の写真)。風力発電用の風車は山の尾根などに建てられることが多いが、周囲には庄内平野の水田が広がる。そこに日本海から吹き抜けてくる強い風が直径82mもある大きな羽を回す。

 この風車を作ったのは、山形県庄内町を中心に建設や生コンクリート生産、運輸、産業廃棄物処理事業などを手がける安藤組グループである。建設、生コン、運輸、産廃、そして風力発電。一見、脈絡のない展開のようにも映るが、そこには安藤政則代表の「地域環境」への思いがあるという。

大型の陸上風力発電事業を本格化させる安藤組グループの安藤政則代表(右)と、長男の安藤将士専務

 「うちは父が戦後、農業機械の販売から始めた会社。その事業の競争が激しくなったことで砂利採取や生コン、建設へと1980年代までに進出して生き残ってきた。地域をつくる仕事をしてきたけれど、環境には負荷をかけた。それで90年代半ばから産廃処理を手がけるようになった。地域の環境を維持してこそ、会社は成り立つという気がしたんですね」

 風力発電もその思いの中で2014年から秋田県三種町で始めたという。これは安藤組グループだけのことではなく、さまざまな産業で環境負荷を修正する動きが猛スピードで始まっている。脱炭素化は世界の潮流であり、新しい事業を生む。

 安藤組グループは肩に力の入った環境保護というより、世の中の意識に敏感であり、ビジネスが生まれる流れを直感的に捉えたとも言えそうだ。もちろん風力建設では、建設や生コン生産など既存事業のノウハウが生かされている。

 18年に庄内町の最上川沿いに2基目を建設し、今年は同町内の山間で一気に4基の大型風車建設に取りかかった。完成すれば、約50億円のグループ売上高の2割近くを占め、事業の大きな柱になる可能性があるという。

続きを読む 2/5 洋上風力に新技術導入

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り4804文字 / 全文6164文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「日経トップリーダー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。