「新たな事業を生み出したい」「異なる分野で売り上げを増やしたい」いつの時代でも新規事業を求めるのは経営者であれば当たり前のことだろう。それに加えて、現在はコロナ禍や原材料価格の高騰など、経営環境が激変している。既存の事業とは異なるビジネスを切望する企業も多い。新規事業を生み、育てるには何がポイントとなるのか。3社の事例から考える。

・既存事業の土台に築いた執念の新規事業 ハッチ・ワーク
・意識して新事業を発掘 「全点張り」で芽を探す(7月5日公開)

 兵庫県宝塚市に本社を置くニッシンはプラズマ処理装置やマイクロ波機器といった独自製品を持つメーカーだ。会社創立は1947年で2022年に75周年を迎えた。現在社長を務める竹内新氏の祖父はもともと大手メーカーのエンジニアで、大手メーカーから独立をするような形でニッシンを立ち上げた。こうした経緯もあり、同社は大手電機メーカーの協力会社として鉄道関連の電子機器などを受託開発している。

 一方、新氏の父は、自社ブランド製品の製造・販売を事業として立ち上げた。07年に3代目の社長に就任した新氏は新しいビジネスや事業を探し出すことを強く意識しているという。新しい事業分野やビジネスの機会をどのように探しているのか、竹内社長に語ってもらった。

 ニッシンの創業者である私の祖父はもともと大手電子機器メーカーのエンジニアで、スピンオフをしてニッシンを立ち上げました。そのようないきさつもあって、元にいた会社のサポートをずっとやってきました。一方でエンジニアですので、商売にはならないにしても、いろいろなものを作って一応製品として並べるといったことはやっていたようです。

 独自ブランドを事業化したのは私の父の時代です。当時はバブル経済の絶頂期で、我々と同じような大手メーカーの協力会社も売り上げが大きく伸びました。そのときにその波に乗ってはいけないと考え、ビジネスがうまくいっている間に自社ブランドや自分たちでコントロールするビジネスに一部シフトしようとしたのです。

「新しいものは
『軽はずみ』に取り組むぐらいでいい」

たけうち・しん
たけうち・しん
1972年兵庫県生まれ。慶応義塾大学大学院理工学研究科修了。鳥取大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2007年に父親の後を継ぎ、ニッシンの3代目社長に就任(写真/都築雅人)

次ページ 様々なところに少しずつ