多くの中小企業は長期目線での安定した経営を目指しているはずだ。新型コロナウイルス感染症の拡大は、そうした中小企業にとって、単一事業への依存がどれだけ危険かを再確認する契機となった。この危険から逃れるためには、短期的な利益率や投資効率を犠牲にしてでも、事業の多角化を目指す必要がある。
しかし、闇雲に多角化をすれば、経営資源の分散を招き、失敗すれば倒産につながるかもしれない。そこで、地道な多角化が安定経営につながっているケースを紹介するとともに、後半には専門家が考える多角化戦略の注意点と、多角化の方向性を整理した。
<特集全体の目次>
・運送業から「地域密着サービス業」へ多角化 地域の困り事を解決
・チャンピオンカレー、コロナ禍でも健闘 オフェンシブ人材を抜擢
・事業の多角化は、全面撤退できる範囲内で試す
・有事に倒れない会社をつくる、多角化10のポイント
これまで紹介した流通とチャンピオンカレーは、いずれも特別な手を打ったわけではない。流通は既存客のニーズの掘り下げや、自社が積み上げてきた採用ノウハウ転用などを通じて多角化を実現した。チャンピオンカレーは、特色あるカレーの製造ノウハウやブランドを持ち、主に販売方法の多様化によって安定経営を達成した。
業種を問わず多角化に取り組むための方法論を考えてみよう。
多角化の定義は人や書籍によってさまざまだ。ここでは広義に「会社の事業や商品展開に新しい柱を立てる行為」と考える。
あらゆる商品やサービスは、時間の経過とともに市場の変化や競合の出現によって価値を減らしていく。「だからこそ、新しい事業に挑戦し続けなければいけない」と多くの中小企業を顧客に持つ古田土会計の古田圡満氏は指摘する。
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