中小企業経営者にとって悩みが尽きない、人の問題。良い社員を採用・育成し、定着させるにはどうすればいいか。人事制度コンサルタントの松本順市氏が語る。

・問1 ITに詳しい人材を特別な高額年俸で採用してもいいですか?
・問2 「こんな安月給では結婚もできない」と若手がぼやく
・問3 ジョブ型にすると、働かない社員の給料を下げられる?
・問4 職務記述書にどんな要素を入れればいいか分からない
・問5 仕事はできるが、勤務態度が悪い古参をどう処遇すればいい?
ジョブ型にすると、 働かない社員の 給料を下げられる?
答
新卒一括採用、終身雇用など日本企業の代名詞とされるメンバーシップ型雇用。これに対して、欧米型のジョブ型雇用は、ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成し、その職務内容に基づいて必要な人をその職務内容に見合った金額で採用します。
ジョブ型が職務に対して人を付ける「就職」であるのに対して、メンバーシップ型は、人を採用してから職務を付ける「就社」と表現すると分かりやすいでしょう。雇用の起点が、職務ありきか、人ありきかという違いです。
そして、最近話題のこのジョブ型雇用に変更したら「働かない社員の給料を下げられるのか」と尋ねられることが増えました。
私は「下げようと思えば、下げられるでしょう」と答えています。ジョブ型は、職種ごとに職務記述書を作成するので、「ここに定めた仕事が十分にできていなければ、今の給料は維持できない」と迫ることは可能だからです。
でも、「社員の給料を下げたいから、ジョブ型を採用するのですか」と私は経営者に聞きたい。新しい賃金制度を導入する目的は、給料を下げることなのか、それとも社員の成長や定着を促すことなのか。自問自答してください。
また、働かない社員の給料を下げる前に、なぜ社内に働かない社員が生まれてしまったのかを考えるべきだと思います。ある日突然、その社員は働かなくなったのでしょうか。その社員に対して、きちんと働くように会社は十分な指導をしてきたのでしょうか。
もし、働かない社員の給料を下げた場合、必ず他の社員にも影響を及ぼします。「今度は自分の給料が下げられるかもしれない」と不安になるからです。それ以降、会社に忠誠心を持つことはないでしょう。組織にとってマイナスであることは明らかです。
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